長樂レコードジャケット展


山中温泉にある中華料理店、長樂(H.P.ブログ)。
餃子は注文を受けてから皮を延ばしたり、材料はもちろん調味料も地のものを使う、
なんでこんな田舎でそこまでするのかよく解らないけれど安くて美味しくてありがたいお店。
(いつもランチを食べず酸辣湯麺ばかりでお手数かけます)

この店は、おまけにときたまジャズライブを開く。

そして、店内にはレコードが飾られている。
私も飾ることになった。
来月もライブがあるので、ジャズのレコードがいいとのこと。

ずるいけれど、ちょっと外して、ECMレーベルで統一することに。
ジャケットがかっこいいジャズレーベルというと、
ブルーノートとベツレヘムが双頭。
お金がなくて2色印刷しかできず、その中で写真に色をのせたり、
コントラストのあるデザインをしたブルーノート。
単独の作品として機能するほどのクオリティを持つ写真を使った、
最も芸術志向のベツレヘム。

そして異端のECMは、ジャケットだけの写真集『Sleeves of Desire』を自社で出版するほど、
ジャケットのアートワークにこだわりと自信を持っているレーベル。
その写真集はすぐに売り切れ、中古では高値で取引される。
先日、倉庫にあった100部くらいを見つけ、最後の販売をした。
もちろん、あっというまに売り切れた。
聴く人も、ジャケットがアートになることを解っている。

紹介文は長樂blogに載せていただいたが、
どれくらいこのレーベルが創立者アイヒャー様の独裁政権かというと、
海外のディストリビューターのテストプレスにわざわざ出向いて何度も駄目出ししたり、
何のことはない問い合わせをメールで送ってもアイヒャー本人から返事が来たり、
嫌いになったミュージシャンの名義作はもちろんのこと、
バックを務めているものまで廃盤にしたりCDにしなかったり、
とにかくすべてアイヒャーのお眼鏡というかチェックが入る。
それでいて、というか、だからこそ、ビジネスとして成功している。

クラシックや現代音楽での功績も最近ではすばらしく、
価値が確立されているクラシックの世界で忘れ去られた作曲家の曲を演奏し、
世界中がその曲を初めて知るという事例も多い。

現代音楽ではジョン・ケージの曲を、最もケージの注文通りに演奏している。
(ケージは自由なイメージを持たれているが、楽譜において厳密に演奏を規定していた)

その音色と音質に一度はまったら全部揃えたくなる中毒性があるけれど、
もうすぐ1000タイトルを超え、
コンプリートを目指しているコレクターの半分くらいが挫折しつつある。
特に“ECM New Series”と称して現代音楽をリリースするようになってからは、
そっちの人たちは大喝采だけれど、ジャズマニアはついて行かなくなった。

ライナーノーツにはドイツの詩人ヘルダーリンやツェラーンが引用されていることが多い。
ゲーテではなくヘルダーリンとツェラーンが多いというのが、好みに合っている。

ECMについては、
かつてトリオレコードでECMを担当した稲岡さんの著書『ECMの真実』が詳しい。


(↑説明書き:ドイツ国旗と中華をイメージして、赤と黄色を差し色に使いました)

飾ったレコードを簡単に紹介;

Jan Garbarek/Dis /1977/ECM1093
Jan Garbarek(ts,ss,wood-flh)
Ralph Towner(12strings-g,classical-g)
ECMを代表するミュージシャンのふたりが組んだ、あまり知られていない大名盤。静かな、静かな、サックスとギターのインプロ。ノルウェーの海岸でレコーディングされたウインドハープも効果的。喧噪や煙草や地下のジャズクラブとは遠く離れた、独り大自然と対峙する音楽。

Arild Andersen/Shimri/1977/ECM1082
Arild Andersen(b)
Juhani Aaltonen(ts,ss,flh,per)
Lars Jansson(p)
Pal Thowsen(ds,per)
綺麗で静か、というECMの音を形容するときに多用してしまう言葉しか出てこないアルバム。ECMデビュー盤の前作よりもインプロは少なく、聴きやすくなっている。それをバップでない単調さととらえてしまうと、ECMレーベルのアルバムのほとんどは、聴けない。

Art Ensemble of Chicago/Full Force/1980/ECM1167
Lester Bowie(tp)
Joseph Jarman(ss,as,ts,bs,b-cl,basoon,piccolo,flh,a-flh,conch shell,vib,celeste,gongs,whistle)
Roscoe Mitchell(ss,as,ts,bs,piccolo,flh,bb-cl,gongs,glockenspiel,conga)
Malachi Favors Maghostus(b,per,melodica,vo)
Famoudou Don Moye(sun-per)
前衛ジャズってどういうの? と言われたら、コルトレーンでも阿部薫でもなく、まずこれを聴かせている。ジャズがお洒落なBGMに成り下がった時代に真っ黒な音を奏でた異能集団。アフリカや東南アジアのポリリズムもあり、これこそが黒い音楽だと再認識させられる。

Art Lande/Skylight/1982/ECM1208
Art Lande(p,per)
Paul Mccandless(ss,eng-horn,oboe,b-cl,w-flh)
David Samuels(vib,marimba,per)
あっけにとられるほどの開放感と、そこに広がる叙情。安っぽい言い方をすれば、広大な風景が広がる映画のような映像が脳裏に浮かぶが、ぎりぎりのところで保つ。レコーディングのせいかエンジニアリングかは解らないが、どうしてこんな音色になるのか不思議。

Charlie Haden/Magico/1980/ECM1151
Charlie Haden(b)
Jan Garbarek(sax)
Egberto Gismonti(g,p)
ジャケットそのまま、色鉛筆で描いた景色のように、淡い写真のように。川端康成は「悲しいほどに美しい」という表現を多用したが、まさにそれ。ベース、サックス、ギターのトリオが織り成す強烈な郷愁。雪のない冬に似合う、透明なものが差し込んでくる音。魔法。

Gary Burton/Sevensongs for quartet and chamber orchestra/1974/ECM1040
Gary Burton(vib)
Michael Goodrick(g)
Steve Swallow(b)
Ted Seibs(ds)
ヴァイブ奏者ゲイリー・バートンのリーダー作。イギリスの作曲家マイケル・ギブスの曲を、ギブス自身が指揮するオーケストラと共演したアルバム。天空からヴァイブの音色が降り注ぎ、オーガニックで美しい時間が流れる。チェンバーロックやカンタベリー系が好きな人必聴。

Gary Peacock/Tales o another/1977/ECM1101
Gary Peacock(b)
Keith Jarrett(p)
Jack Dejohnette(ds)
アイラーやエヴァンスなどとも演奏し、消えたと思ったら何と日本の京都で隠遁生活を送っていたピーコック。これは復帰後にジャレット、ディジョネットと組んだトリオ。エヴァンスの許で習得したトリオのあり方に基づき、誰もがリーダーと呼べる作品。ただ、声が不要。

Jack Dejohnette/Special Edition/1979/ECM1152
Jack Dejohnette(ds)
David Murray(ts,b-cl)
Arthur Blythe(as)
Peter Warren(b,cello)
フュージョン全盛の時代にジャズの復権を高らかに宣言した、畢生の大傑作。タイポを縦にズラすことの多いブルーノートのジャケットデザインに逆らうかのように、カーニングによって間のあるリズムを表現。色づかいも黒を使わずブラックカルチャーを感じさせて秀逸。

John Abercrombie/Gateway/1975/ECM1061
John Abercrombie(g)
Dave Holland(b)
Jack Dejohnette(ds)
ぬめるような黒いグルーブ。その濃い味を、アバークロンビーのギターが程良く薄め、バランスのとれた味つけにしている。ギターはエレクトリックだが、いわゆるフュージョンとは全く異なる、正統的な進化を遂げたジャズ。重くて暗くて黒く、なおかつ知性の一瞬の輝きも。

Kenny Wheeler/Gnu high/1975/ECM1069
Kenny Wheeler(flh)
Keith Jarrett(p)
Dave Holland(b)
Jack Dejohnette(ds)
怜悧さはなく、柔らかさと優しさを持った美しさ。フリューゲルホルンの甘美な音色がジャレットのピアノと合っていて、リリシズムを醸す。バックにはECMを代表する敏腕が勢揃い。ジャケット写真は内藤忠行。温度のある質感、広がりと緻密さを的確に捉えている。名作。

Meredith Monk/Turtle Dreams/1983/ECM1240
パーソネルは省略。ジャズではなく、舞台で演じるボイスパフォーマンス。バックはオルガンやムーグ、デジャリドゥーなど。これを聴くのは、かなりつらい。意図を理解し、舞台を観ないと解らない。とはいうものの、ここまで聴けないと、妙に病みつきになってしまう。

Miroslav Vitous/First meeting/1980/ECM1145
Miroslav Vitous(b)
John Surman(ts,ss)
Kenny Kirkland(p)
Jon Christensen(ds)
今でもバリバリの現役ベーシスト、ヴィトゥス。ウェザー・リポートに所属していたこともあるが、ここではアコースティック。アルコソロも随所にあり、どこまでも広がる景色のように、ベースの音色が響き渡る。空間の「間」を生み出すクリステンセンのドラムも相性抜群。

Oregon/Crossing 1985
Ralph Towner(classical-g,12strings-g,p,prophet5,syn,cor,perc)
Paul Mccandless(oboe,b-cl,ss,eng-horn)
Collin Walcott(tabla,sitar,perc,snare d,bass d)
Glen Moore(b,flu,p)
4人でイングリッシュホルンからタブラ、シタールまで駆使する、どこの国の音楽でもないバンド、オレゴン。核となるのはタブラとシタールを演奏するコリンだが、このアルバムを録音した2週間後に39歳で事故死。排気ガスやゴミとは無縁の、透明な自然美の世界。

Paul Bley/Open, to love 1972
Paul Bley(p)
ピアノソロ。張り詰めた緊張感が、ECMのエンジニアリングによって正しく記録された名盤。無音状態の方を聴くのではないかというくらい、異様に少ない音数。ピアノが弦鳴楽器であることを再認識。良い音のオーディオで聴かないと意味がない。意外と官能的だったりする。

Ralph Towner/Solstice Sound and shadows/1977/ECM1095
Ralph Towner(12strings-g,classical-g,p,Fr-horn)
Jan Garbarek(ss,t,flh)
Eberhard Weber(b,cello)
Jon Christensen(ds)
ECMを象徴する音色、アコースティックギター。その代表が、つい最近もソロアルバムをリリースしたラルフ・タウナー。これはSOLSTICE名義での第二作。ガルバレクとのサックスの絡みは絶品。ジャケットデザインはつまらないが、テクスチュアのある紙が使われている。

Richard Beirach/Eon/1974/ECM1054
Richard Beirach(p)
Frank Tusa(b)
Jeff Williams(ds)
ピアノトリオ。張り詰めたテンション。硬質で透明感があるのに甘口の情緒垂れ流しのようにも感じる不思議なピアノ。和音が独特。マイルスの“Nardis”から始まる。当時の邦題はそのまんま「ナルディス」だった。エヴァンス人気の日本でも、もっと聴かれてほしい。

Stanley Cowell Trio/Illusion suite/1972/ECM1026
Stanley Cowell(p.el-p.thumb-p)
Stanley Clarke(b,el-b)
Jimmiy Hopps(ds)
ピアノとエレピと親指ピアノを駆使して創出される、全曲オリジナルのピアノトリオ。流麗で理性が働いている。最初のD音が鳴り響いたときから幻想世界に誘われる。各人アルコやトレモロを駆使していておもしろい。でもテクニックを見せつけるのではなく、必要条件。

Keith Jarrett/The Koln concert/1975/ECM1064
Keith Jarrett(p)
KOLNのOは、正しくはOウムラウト。ECMレーベルで最も売れたアルバム。まったく事前準備なしに望んだ完全即興。驚異のソロピアノ。今でも売れ続けているのが解る。4曲目は即興でないことを後に明かしたが、1曲目のめくるめくピアノに呆然。新宿で315円で購入。

Terje Rypdal, Miroslav Vitous, Jack Dejohnette/1979/ECM1125
Terje Rypdal(g,g-syn,organ)
Jack Dejohnette(ds)
Miroslav Vitous(double-b,e-p)
メタルも独特の発展をする北欧のギタリスト、テリエ・リピダル。「回転数間違えたかな?」と思わせるイントロから北欧全開。鷹揚なギターシンセの効果音がドローンサウンドのように鳴り響く珍品。右上の「ECM」は、そのままCDサイズに縮小したら読めないサイズ。

Tomasz Stanko/Balladyna/1976/ECM1071
Tomasz Stanko(tp)
Tomasz Szukailski(ts,ss)
Dave Holland(b)
Edward Vesala(ds)
エドワード・ヴェサラのドラムが絶品。東洋やアラブのリズムも消化した、引き出しの多いヴェサラがホーンを煽る。フリーキーになったりドラマティックな展開になりそうになる寸前でどうにかジャズの文法におさまる匙加減が絶妙。ECMには珍しく厚めの録音。重くて綺麗。


紹介は簡単ではなかった。



CDも3枚飾ることができるので、
ピンクフロイドやツェッペリンでおなじみのデザイン集団ヒプノシスが、
セレクト、取材、分析、研究したレコードジャケット本である
『100 BEST ALBUM COVERS』に載っている
Edward Vesala Sound of Fury/Imvisible storm
Peter Erskine/You never know
の2枚を選んで、もうひとつはECMの裏ロングセラー、
Jan Garbarek The Hilliard Ensemble/Officium
にしました。
ECMは1990年代に入ってからレコードでのリリースをやめてしまい、残念です。

『100 BEST ALBUM COVERS』も、長樂に置いておきます。
辣油を垂らさないようにお気をつけて、ご覧になってみてください。
ECMには、ケンタッキーバーボンではなくコルンやアクアヴィットが似合います。
中国茶や金木犀のお酒、ライチのお酒とも合うような気がします。
と、強引にシノワと関連づけ、ものすごく長くなった文を締めたいと思います。
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コメント

大阪キャバクラー様
コメントありがとうございます。
演歌でビールも好きです。
でも演歌は新橋ガード下や新宿ゴールデン街、
吉祥寺のハーモニカ横町がいいですね。
ECMとアルコールは合うと思いますよ。
特にコルンやアクアヴィット。

ECM好きです

中華料理と北欧JAZZって組み合わせはスゴいですね。
演歌の方がいいかも。ビール飲みながら。
ECMとお酒も合わないような気がしますね。

こちらこそありがとうございます。
レコードたちも額におさまって幸せものです。

給料日前なので出足が遅いと思いますが、
友人たちも足を運ぶと思います。

not subject

今日も有難うございました。
お洒落なジャケットに 店がガラリと変わったような気がします。
では、期間中 宜しくお願いします。
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