エスプレッソ


クルマで15分ほどで、海に着く。
そこには、最近自家焙煎のコーヒーに力を入れているお店が、ぽつんと建っている。
わがままを言って、私の漆器にいれていただいた。
あまり飲食店で撮影しないのだが、私はエスプレッソマシンを持っていないし、
エスプレッソをいれるのはプロの仕事だと思っている。
このカップ&ソーサーにエスプレッソを入れたところを、どうしても撮りたかった。
店のご主人は、撮影することと画像をネットに掲載することを、快く了承してくれた。



この店のエスプレッソは、泡がすばらしい。
薄茶色をした泡は、漆の朱と、とても合う。



木は、熱伝導率が低い。
熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいまま。
(冷たい飲み物を入れても、外側に水滴がつかない。水滴は、冷たさを奪っているからできる)
そして器は熱くならない。
なので、そのまま持つことができる。
ということは、持ち手が必要ない。

エスプレッソは、泡が消えるまでに飲み干すものだ。
だから(というわけでもないけれど)底を丸くしてある。

私の作る漆器に塗る漆は、溶剤を混ぜていない。
溶剤を混ぜていない漆は、実は熱に強い。
エスプレッソマシンから直接注いでも、変色など起こさない。



露出を変えてみた。
漆の朱色は、紅くなったりオレンジ色になったりして、撮影が難しい。



漆の朱色には、顔料が使われているものが多い。
鉱物原料である顔料には、カドミニウムや水銀が含まれている。
私の作る漆器の朱色は、植物原料の染料で色を出しています。



ごちそうさまでした。

この店からは、海まで20メートル。
海が見える。というより、海しか見えない。



一般的には「あいにくの空模様」なのかもしれないが、私は薄曇りの空が好きです。
大好きな詩の一節が、頭に思い浮かびます。


僕の好きなのは雲さ……。流れて行く雲……あそこを……あそこを……あの、類稀な雲なのさ!


  (シャルル・ボードレール「異邦人」『ボードレール全集1』福永武彦訳 人文書院)


この詩は、問いかけがボードレールで、
「僕が好きなのは雲さ」と答える人は、ボードレールとは別人です。

(このカップ&ソーサーは、日本デザイン登録協会に登録済みです)
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