福祉と漆器はむしろ相反するもののように思えますが、私がデザインしている、高齢者や介護を必要としている人たちのためのお椀を、どなたかがどこかで目にしてくださったようで、商品を送るだけで後はやっていただけるみたいです。

ブランデーグラスのように持つことのできる脚つき椀は、私が2002年10月に完成させ、2003年1月には石川県デザインセンター選定品となり、2003年6月に日本デザイン登録協会に登録しました。そして、同じ「ブランデーグラスのように持つ」というアイデアを模倣したお椀が、その直後にある漆器メーカーから出て、積極的にメディアやイベントに参加しています。残念なことです。

模倣したところは、私が漆器づくりに携わるずっと前から、漆器を作っています。そして漆器は、何百年も前から作られています。これまでにひとつたりとも、ブランデーグラスのように持つお椀は、作られたことがありません。たまたま時期が重なったにしては、あまりにも近似しています。

新しいデザインというのは、できあがってみるとコロンブスの卵のようなものです。いままで誰も思いつかなかっただけで、作ることは簡単である場合がほとんどです。脚つき椀も、高台のかたちを変えたに過ぎません。でも、そのかたち、新しい使い方を思いつくまでに、どれだけ苦労しているか、苦労の果てに答えを見い出したときの喜びがどれだけのものか、真似をして作るだけの人には解らないでしょう。

そういう苦労は不要だと考えている人が「伝統工芸」を売りにしている企業に多すぎると、最近思いはじめています。

いやな話になってしまいました。
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