阿部和重『プラスティック・ソウル』



だからといって
このようなカバーにするのは
いかがなものか
「批評空間」1998年1月号から2000年4月号に掲載。
完結回のみ「批評空間」を目にする機会を逃した。
すぐに単行本になるだろうという楽観的な予測は見事に裏切られた。

初期の蓮實重彦と柄谷行人がのりうつったような構造と文体、
最近のエンタテインメントに徹したサービス精神豊富な読み物。
これは、そのどちらでもない阿部和重の苦心作。

よくも悪くも
阿部和重だけが文字にしてしまう
凝りに凝った叙述の仕掛け。

1990年代、さまざまな小説や歌に描かれた東京タワー、
登場人物のカタカナ表記、
そのどれもが、なつかしい。

なつかしさを一通りやり過ごしてから、
どうにか読むことができた。

レイヤーが、この小説の重要なキーワードになっている。
だからこその、この装幀なのかもしれない。
プラスチック。

年を経るほど
カバーには細かい傷がついて
透明感が失われる。

5年、10年経ったそのとき
初めから周回遅れの内容は
どうなっているだろうか。

時の流れに耐えうる力を放っているだろうか
それとも
カバーと同じく劣化する一方なのだろうか。
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