北海道と芸術その秘密と、それより大きなもの

今年、最も頭を使い、時間をとったイベントが、ようやく開催されました。
私は、組合においても単なる研修旅行などは企画しません。


会場となった太郎吉蔵は、中村好文氏の設計。特定非営利活動法人アートチャレンジ滝川のシンボルともいえる建物です。トイレは別棟で、中は完全にひとつの空間です。天井も高く、弦楽器が気持ち良く響く印象を受けました。とても雰囲気ある装飾で、漆器が展示されています。こうしたライティングや什器の使い方は、ありきたりの展示ノウハウしか持たない漆器屋には勉強になったと思います。




私たちが到着したときには、ほぼ満席でした。



金沢美術工芸大学学長による講演が1時間。その後、学長と五十嵐威暢氏、そして山中漆器の大尾嘉氏と私が、デザインと漆器についてトークセッション。そして来場者の方たちとの立食形式の交流会と、あわただしく行われました。

その後は親睦会。北海道の秋の味覚を堪能しました。そして私たちのことを「大酒飲みの集団」と思われていたようで、二次会の場所まで取っていただいていました。その後、夜中なのに蕎麦。現在、蕎麦は長野ではなく北海道です。そして滝川は合鴨が名産です。




宿泊したホテルの1階には、私の取引先であるエムエイチユニット(石川県の人にここのすごさをお伝えするには、21世紀美術館の家具をここがデザインおよび制作したというだけでじゅうぶんでしょう)が経営するdesignshop takikawaがあります。私が声をかけて参加希望した3社のアイテムが来年2月末まで展示されています。こっちは「山中木製漆器展」というタイトルです。ちなみに私の漆器は、オープン当初から取り扱っていただいています。漆器屋の世界は、取引先を紹介するようなことは絶対にありません。ある商品を売ることになったら、漆器屋はそれを同業者から仕入れて自社から売ります。他社との取引口座を持たれたくないからです。でも私は、そんな製造者責任の所在が曖昧になってしまう、お客のことを考えずに自分のことしか考えていない商慣習は無視します。

翌日は滝川市役所の方の案内で、滝川市の芸術への取り組みを観ました。たくさんの芸術作品が、市のあちこちに、屋外や屋内に配されています。忘れ去られた公園を再生したり、五十嵐さんの構想はどんどんふくらんでいるようです。下の画像は、子どものための施設のエントランスホールに架けられた、白樺の合板を切り抜いた五十嵐さんの作品です。こういうのを観ると、漆を塗りたくなってしまいます。




札幌に着いてから自由行動時間を設け、私はイサム・ノグチのモエレ沼公園を楽しみました。モエレ山も登りました。夜に漆器屋だけでの懇親会もあったのですが、その前に私は羊の刺身を食べるためにジンギスカン屋へ、そしてトドの刺身を食べるためにアイヌ料理屋へ行きました。もちろんラーメンは2杯。羊の刺身は陸上動物らしい筋がまったくなく、マグロと鹿の間のどこか、酸味が程良く効いていてマグロならミナミマグロのようでした。私はクロマグロ(ホンマグロ)よりもミナミマグロが好きなので、好みに合い、ひとりでぜんぶ食べてしまいました。トドの刺身は思った通り鯨に似ていましたが、鯨よりも濃厚でさわやかな味で歯ごたえがありました。

往路を金沢から直接空港に向かった私は、帰路も21美での展示会の搬入のため金沢へ向かいました。


ここから下は、ぼやきです。長いです。
書かなくてもいいことを書いてしまうのは私の悪い癖ですが、それもまた私なのです。

名目上は山中木製漆器協同組合青年部の研修旅行です。しかしこれまでは研修とは名ばかりで、要は単なる親睦旅行、どこかを視察するだけでした。昨年末に今年度の組織の打診があったとき、私は旅行の担当なら委員長になると言いました。そして私は私の姿勢と倫理に基づき、軽くどこかの施設を見学するだけのお気楽親睦旅行を、一般の人たちを集めて開催するイベントに変えました。漆器屋が集まっている組合なら、個人でもできるような施設見学などではなく、山中漆器をアピールできる機会を設けることのほうがどう考えても有意義だからです。NPOと彫刻家の五十嵐氏と金沢美術工芸大学の平野学長を動かし、トークセッションを企画し、山中漆器の展示も抱き合せ、そして販売もできるようにして、旭川の家具メーカーとのビジネスのテーブルを設け、私の取引先であるギャラリーショップでの展示販売も同時開催しました。もりだくさんです。これまでの旅行とは異なり、多くの人が準備をしました。私もキャプションや原稿を書き、山中漆器の史料的な情報を提供しました。組合は何も手伝ってくれません。山中木製漆器協同組合の紹介文まで私が書く有様です。おまけに山中木製漆器協同組合というサイトすら持たない小さな組合は、これまで外に情報を発信したことがないらしく印刷物が何もありません。山中の木製漆器についてたった1枚のリーフレットもないのです。なのでカタログを置こうと思ったのですが、カタログを置くなら販売体制を整えなければいけないとお偉方は言い出しました。そういうものは何十年も前に整えておくべきことのような気がします。という苦労話はともかく、行って帰ってあー楽しかったで終わる旅行ではなく、それから何かが始まるきざしのあるものにしました。なのに予算は例年と変わらないというアクロバティックな技まで繰り出してしまいました。おまけに売上が計上されてしまうかもしれません。これが、何かを企画するということです。誰かと誰かが出会う。新しい何かは、そこからしか生まれ得ないのです。

交流会では、立食パーティ慣れしていない山中漆器の人たちが、我先にビールや食べ物に群がり、自分から話しかけることもせず内輪で固まり、少し残念でした。パーティのホストを務めることも、勉強のひとつです。以前「漆の設計」展でのパーティにおいても、ホストであるはずのデザイナーのひとりが泥酔して大声で騒いでいたことがありました。私は「自分らしく」とか「ありのまま」とか「ざっくばらんな雰囲気」といったものを勘違いしている人のことが苦手です。そういう人は、山中全体の印象を悪くさせないためにも、山中から一歩も出ないでほしいものです。


(今回の画像は、私ではなく研修参加メンバーのひとりが撮ったものです)
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コメント

氏様
コメントありがとうございます。
ぼやきや批判は人間性が落ちるのでなるべく書かないようにしているのですが、つい出てしまいます。言うだけなら誰でもできますし、私は、何を言うかではなく、何をしているかでその人を判断していますし。そんな私がぼやいているだけだったら間抜けです。なので組合研修旅行も自分で変えたわけです。

ああ。

はじめまして。
大変興味深いです。写真も文も。
モノの話も良いですが、この項や「すばらしき伝統文化都市、金沢」のような、
腹立つ話 まじまじと読んでしまいます。ぼやきたくなりますよねえ。

また少しずつ拝見させていただきます。
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