ししゃも



最近このブログは私の作る器で食べたり飲んだりする内容が増えてきて、これは一体どこのカテゴリにすれば良いのか判断つかなくなってきているのだけれど、今さらどうしようもないので感覚で分ける。ふだんシャンパーニュだワインだリキュールだと言っていることと、集まったときにはビールばかり飲んでいることもあり、私には日本酒を飲む印象がないようです。しかし、どこからどう見てもつぶらな瞳のニッポン人の私、お酒も飲みます。むしろひとりやふたりのときにはビールを飲みません。蕎麦屋でビール、リストランテでビール、そんなことしません。
日曜の午後といえば、お酒です。ちょっとした蕎麦屋やバールがあれば良いのですが、ここは石川県加賀市。タクシーで1000円以内に収まる距離で日中開いているお店は旨くもないお好み焼き屋だけという有様。なので自宅で武満徹を聴きながら、私にはとても手に負えないからこそいつまでも付き合うことができるというか直接的に対峙していても答えの出ないところがさすがの構造である禅の公案に思いを耽溺させながら飲むわけです。今日は、先日北海道で購入したししゃもを焼きました。月曜日に購入し、日曜日に食べる。いくら「肉と果物と女と男は腐る寸前がいちばん美味い」とはいえ、来週の日曜には寸前どころか真只中。ちなみに私は、お酒を飲むときには必ず何かを食べます。ストア派でもないしハードボイルドでもないし伊集院静でもないのです。

有名なのでご存知だとは思いますが、スーパーで売られているししゃもはししゃもではなく、カペリン(キャペリン)という種類の魚です。とはいうものの、お弁当や定食の白身魚のフライにある白身魚がメルルーサだったとしても、メルルーサはスペインでは立派なメインディッシュになっている魚だったりするので、違うからといって駄目というわけでもなかったりします。しかしながら、ししゃもを味わうことなくししゃもを判断するのはよくないとも思います。中国産の汁椀に味噌汁を注いだら変色したとかひびが入ったからといって漆器が駄目だというわけではないのと同じこと。なるべく私は、ありとあらゆるものを食して死にたいと常日頃から思っています。だからこそ北海道へ行ってもじゃがバターやソフトクリームは食べずに羊やトドの刺身を食べるわけです。

以前、四角くて真っ黒な、つまり私の好みにぴったりの七輪を合羽橋で購入したことがあるのですが、訳あって友人に譲ったため、七輪を持っていません。あれと同じものならば私の審美眼に適うのですが、街にあるのは耳なし法一(芳一)のように文字が書かれた円いものばかり。私はホームセンターで炭とコンクリートブロックと金網を入手して焼きました。部屋の中でアウトドアです。

ししゃもは漢字で柳葉魚と書きます。頭の悪さで名の知れるMac特有のことえりでも、ちゃんと変換できます。持ってみると柔らかい。一夜干しだろうか。焼き網にくっつかないよう気をつけながらも、何度もひっくり返すのは良くないとも思いつつ、じっくり待つ。干し魚なのに脂が滴り落ちる。気がつけば部屋の中は煙だらけ。来週の日曜は酒なんて飲んでいる場合ではなく換気扇の掃除(私の部屋には換気扇があるのです)だと確実に訪れる暗い未来に目をふせるも、目を開ければそこには黄金色の柳葉魚。さっそくいただきました。

柔らかい。味がある。甘くてコクがあるのに爽快な香り。肉質はカペリンよりもハタハタに近い。金網の痕の食い込み具合からお察しの通り、皮が薄くて肉に弾力がある。卵はカペリンのようなポロポロなものではなく、卵らしくねっとりとしている。10匹あったのにあっというまに5匹が私の腹のしかるべきところにおさまり、日本酒も350mlほど私の腹の中で柳葉魚と同居した。残りは白醤油を塗って焼き、場末のスナックで出てくるポッキーのように何かに立てて盛りつけようと思う。もはや昭和はレトロですが、私の住まいの近辺では、まだまだ本気です。



石川県のお酒といえば菊姫と天狗舞が双頭ですが、私は手取川が好きです。軽やかで華麗、なおかつ上品でしっかりとした甘みがあり、にもかかわらずきりりと引き締まっています。いわゆる酒くさくならないのも良いところ。中でも大吟醸本流は最もさわやかなので、柳葉魚の味を邪魔しないだろうと思ったらその通り。日本酒は開栓したら味が1週間も持たないと私は思っているので、いつも720ml瓶です。ちなみに手取川とは石川県で最も長い川の名前で、手と手を取って渡らないと流されてしまうというのが由来。額面いくらで手取がいくらというわけではありません。

器は、柳葉魚をのせているのが鮨屋の注文で作った板の失敗品、盃はライフアンドシェルターのおふたりが設計した氷壇杯。夏も、漆で日本酒を涼しくいただける盃です。横浜のアクリル工場特製の土台が数年後もその透明感を保っていることができるのか、身をもって実践中というわけです。しかし私は論理実証主義は肯定的なものの、経験主義には懐疑的です、といったことを話しはじめるとまた長くなるのでやめておいて、盃は黒摺漆仕上げなので、商品展開している黒や朱塗りよりも口当たりがさらにシャープ。自分用の参考商品です。でも私には、容量が少ないです。
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コメント

not subject

>LIN様
カペリンが幾らなのか知りません……。頭は食べます。尻尾は焦げてしまったので、指でこすったらなくなっちゃいました。加賀は、おいしい蕎麦がありません。唯一、高速道路の徳光P.A.の立ち食いが全国の高速道路でいちばん人気なくらいです。蕎麦は東京がおいしいですね。気合いが違います。気でつないでいるんじゃないかってくらいです。田舎の蕎麦は太さがまちまちで、細いのに茹で時間を合わせているのか太いのに合わせているのか、そんなことから気になってしまいます。
イベントプロデューサーは、もうこりごりです。というより、ろくに自分のライフプランもできないのに、他人様のプロデュースなどできません。プロデューサーというよりプランナーの気質のほうが強いと自分では思います。でもまあ、それもまた、ろくに自分のライフプランも(ry

>i様
そう言われるともっと遊びたくなってしまうので、あまり言わないでください。

not subject

YAHOO!電話帳笑いました

not subject

おいしそうなししゃも!
下世話な話ですが、ししゃもはお値段が、カペリンの5倍くらいしますよね。
でも、私もししゃもの方を買ってしまいます。
ところで、kotaさんは頭は食べる派ですか?
加賀には、おいしそうなおそば屋さんがありそうなのに、ないのですね。
昼間(できたら午後)、日本酒をちびちび飲みつつ、しめにおそばっていうのは
いいですよねえ。
北海道の研修会の記事、興味深く拝見しました。
私も男たちが、研修会と称して、旅先で飲んで遊んでゴルフをやっているのが
不思議なんですよねー。
いいわけていどに、2時間くらいの会議とか講演会を入れてね。
kotaさんがおやりになった試みはすばらしいですね。
今後、日本にもそういう研修会が増えていくといいですよね。
kotaさんのプロデュース能力を拝見していると、
もちろんkotaさんは素晴らしい職人でいらっしゃると思うのですが
イベントプロデューサーの才能もおありになるなあ、惜しいなあと
思ってしまいました。
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