Vt=V0(1+r)t

5大ニュースをということで切り口に迷いましたが、ディスクロージャーのようになってしまいました。しかしながら、私は自営業。株式会社ではないのでIRはしておりません。というより、プレスリリースすら4年間に一度しかありません。
■事業ポートフォリオの変化によって商品の経験曲線が予想外の変化となった。
これは通常、順序が逆です。ポートフォリオにはリスクフリーを資産として組み込むこともできます。私は、事業ドメインを最優先しています。ということはドメインが揺るがないので、まず全体のバランスを考慮します。というのは、ひとつの商品が売れ筋になったら「攻めできだ、どんどんいけ」となりがちですし収入も増えるでしょう。しかし、その方向に進むことは事業ドメインというか「私はどのようなものづくりをしているのか」という「何か」が崩れます。イメージが多方向へ拡大していくことは、企業であればむしろ目的となっていることです。しかし私にとっては「私はどんな漆器を作っているのか」という根幹が、広くて浅い凡庸なものになってしまうのです。何でも揃う漆器屋ではありません。何でも揃うと自認している漆器屋にはないものを作っています。そこにはふたつの方向があることは、私と話した方ならご存知のことと思います。そして、そうしたことは、実際に作っていただいている職人たちへの「動機づけの技術」にも関わってきます。

■リスクを気にしないようにと考えることは、リスクを気にするということ。
事業を構築するときには、リターンとリスクの双方から検討しなければななりません。NPVが大きいか小さいか、そんなことは私は気にしていません。業界全体の「行ける」「行けない」と私の競争優位性が「ある」か「ない」かをマトリクスで評価するのが、リターンです。一般的には、業界全体が「行ける」かつ私が「ある」場所をとりますしMBAでもそう答えると正解ですが、私はそこをおろそかにした一年でした。マトリクス評価をしていたのは、リスクにおいてばかりです。私は常に「私が漆器づくりをやめたら困る人がいるか」ということを考えています。誰も困らないなら、作る必要などありません。仮に私に妻子がいて、妻子が困るという大義名分だけでは、たくさんある職業の中から漆器屋を選ぶ理由になりません。また「自分がしたいから」というのは、いちばん質の悪い冗談だとも考えています。

■プロダクト・ポジショニングの再構築。
これまでの私の顧客は、一般的な漆器の顧客と変わりがありませんでした。そこが市場だからです。しかし、私が考える器は、そこだけではありません。独り暮らしの20代の女性のための器、著名な建築家の手による真っ白な建物に適した器、などなど。生活様式は多様です。私の漆器とは、大量に使われることを前提としていません。蛇足ですが、一旦フォーカスしたら、とことんフォーカスしないと成熟さに欠けます。使う人が多様となっても、そこに共通する通奏低音的なものがあるので、私のものづくりが、ぶれることはありません。また、海外展開においては、オリエンタリズムに堕することは避けました。東洋や伝統を持ち出すことが最も手間が省けるのですが、日常的に使われることのない「作品」は、最も存在すべきではないと私は考えています。機能とデザインによって、購買するときの候補に自然と加えられるものを作りたいと考えたのです。

■「成功の復讐」の安易さによる誘惑から自由になること。
対処療法型は草創期に伸びます。しかし、その後は緩やかな下降線をたどります。私は企業ではなくひとりでものづくりを手がけています。おまけに、長く使われることを前提にしたものを作っています。それは、現在購入して50年後も使われているという品質のみならず、50年後に使われているということは50年後も売られていて何の疑問も不満も恥ずかしさもないかたちである必要がありますが話が逸れて長くなるので置いておくと、企業ではないため、疑問点の抽出や反対意見や批判などもひとりで行わなければなりません。そして、コントロール過剰になることも避けなければならないと意識している必要があります。そのあたりのバランスをとることができた一年でした。「もっと売上を伸ばしたい」と考えることが目的であれば何ら疑問を持たないのでしょうが、営利追求が大前提のものづくりでは事業ドメインそのものが崩れる私にとって、つねに動機を更新していくことは、もっと良いものを生み出したい、という一言に尽きるのです。

■「できない」と何度か言った。
私の暮らしている地域ではほとんど実践されていませんし実践しなくてもやっていけるところが田舎の良さでもあり、そういう態度でお客に接していても他に選択肢がないのでお客にとってはそこしかないところが田舎の不便なところでもありますが、サービス業の基本中の基本に「できない」とか「やってない」とは言わないこと、というものがあります。それは、ものづくりの矜持とは全く別の話。製造業である私も、作ったものを売るということについてはサービス業。なので心がけているのですが、しばしば、できないことがありました。ほんとうにくやしい。

先日のテレビの取材で私はマーケティング寄りの話をかなり長くしたのですが一切放送されていなかったので消化不良を起こしていたらしく、こんな内容になってしまいました。
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コメント

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higedebu様
遅くなりました。
12月は消化器系の休む暇がありませんね。
近所の同業者の中には、12月の忘年会だけで15回という人がいます。
ハイになるなら良いことなので、副産物とも言えますね。
ご自愛くださいませ。

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ご協力ありがとうございます。
含蓄が深いですね。
私などは連日の消化不良で、腸捻転を起こしています。
気分だけは、いつもハイです。副作用かな?
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