山中漆器で使われる樹種は主にケヤキ、栃、水目桜ですが、竹もよく使われます。特に茶道。箸洗い、菓子盆、、香合、茶杓、季節によっては花器。蹲踞や柄杓にも見られます。竹を使った茶道具では、茶筅が用の美の極致でしょう。一度しか使われることのない茶筅。繊細で清浄な姿は、竹の特質を最も表していると思います。茶道以外にも、竹を使うところがあります。禅宗です。
「しっぺ」の語源は、写真の竹箆です。いわゆる禅問答のときに使われます。現在では法戦式という儀式で使われることが多いようです。お寺へ応量器を納めているので、こういったものも時おり注文をいただきます。



材料は、弓を再利用します。少し切り落とし、持つときはそちらを上にします。断面は、弓そのもの。竹は繊維の束ともいえる構造で伸縮性が低く(そのため定規に使われた)、ひびや割れが起きやすい素材です。竹箆は、もともと弓のかたちに鍛えてあるものなので、とれたての青竹よりも丈夫。弓を作るときは、曲げるところだけ焼くのではなく、全体を均質に焼きます。しかし竹箆として再生するには下地が重要。たっぷりと漆を吸い込ませ、破竹の勢いで割れるのを防ぎます。その上から下地の錆をつけ、黒漆を塗り重ねます。赤い部分は、細く切った竹を巻き、朱を塗っています。握るところには赤い紐。紐が紫色の竹箆もあります。いくつか弓を確保していますので、3か月ほどいただければできあがりです。



竹はイネ科に分類されている、アジアではおなじみの植物。木なのか草なのかはっきりしないところが変竹林です。パンダの主食なので、草にしておきたい気がします。独特のしなりがあり、樹木とは異なる使われ方がされてきました。竹の小さいものが、笹。大きさで名前が異なるというのは、イルカとクジラみたいですね。ちなみにバンブーと竹は、英語と日本語の違いではなく、違う植物です。

蒔絵を施す場合は、松と梅だけを描いて松竹梅にしたものが多く見られます。竹は筒状で使えるところが手軽です。ヘビージャンキーになると、阿片を竹筒で吸います。セルジュ・ゲンズブールの最後の恋人バンブーの名前の由来は、それです。また、編むことも多いですね。脱衣籠に竹が使われるのも、昔の人が清浄さで選んだのだと思います。電球のフィラメントがなぜ竹になったのかは、私には分かりません。竹輪の要領でバームクーヘンを作る人もいます。笹や竹皮は材料を包んで調理するときに使われます。菜箸と串は今でも竹が主流。食用竹炭、竹酢液、竹繊維、竹フローリングと、現在利用法が増えています。蛇足ですが、竹炭をオーディオ機器に貼ったり竹シートをコードに巻くと音が良くなるというオカルトめいた説もあります。竹の子どもである筍は、竹冠に旬と書きます。旬とは、10日間を意味する言葉。とれたての生の筍は大好きです。四方竹も美味しいですね。飲食店のお品書きに松竹梅の3グレードある場合は、いちばん選ばれやすい中間の竹が、最も飲食店にとっては利益率が高いことが多いようです。日本最古の物語は、竹取物語。私の頭の中ではときどき、かぐや姫と織姫が、ごっちゃになります。

「竹箆は竹箆にあらず」という言葉があります。若干異なる意味になるのですが、私はこの言葉を思い出すと、いつでも自然に還ることのできる、燃やしても捨てても害のないものだけを使おうと心がけています。物の本質とは形に依存しているのではない、ということを教えてくれる言葉です。
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