The Cinematic Orchestra/Ma fleur



【jazz,folktronica,cinemamusic】

クラブミュージックにおいて確固たる地位を築いているninja tuneには、もうひとつの世界がある。打ち込みと生楽器とソウルフルな声で織り成す、ジャンル分け不可能な独自の音。その至宝が、ザ・シネマティック・オーケストラ
この世の風景とは思われぬ幻想空間を生み出したフジロック、そして名作“Every day”をドロップした2002年。この5年間、私はことあるごとに“Every day”を人にすすめてきた。ようやく届いた新譜。架空の映画のサウンドトラック。“Every day”の衝撃はないし、暗さと重さは薄まり、複雑さは奥に引っ込んだ。そのぶん美しさが際立っている。フォンテラ・バスの唄は今回2曲。前作よりもピアノが効いている。映像が脳裏に広がるかというとそうではない。ハッピーになるわけでもないし、癒されるわけでもない。夜の静寂に墨(ほんの少しだけ光を反射し、透明感がある)を流したような音楽。ゆったりとして、暗く、美しいアルバム。

感情の発露としての音楽、表現の顕示としての音楽がある。それに共感できれば、かけがえのないものとなる。ボブ・ディランの詩のように、ニック・ドレイクが見たものを享受するように、オーネット・コールマンの何とかかんとか理論のように。そして、聴く者にある種の作用をもたらす音楽がある。確信に満ちたアンダーワールドのリズムのように、衝動に駆られるポップ・グループのように、ひたすら単調で心地よい初期のクラフトワークのように。しかし、それらとは別の成り立ち方の音楽もある。ザ・シネマティック・オーケストラの音楽には美しい旋律もあるしソウルディーヴァの唄もある。だが、感情を押しつけるわけでもなく、どんな聴き手も一様に同じ方向へ向かわせるわけでもない。人間不在で、聴く者はただ風景の中に投げ出される。そして、雄大な山頂からのパノラマや、光を反射する水面に目を奪われたりするときと同じように、心が揺り動かされる。

このような体験は、とても貴重だ。

19日には、各曲を写真で表現したポストカードがついている本国の限定盤が出る。
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コメント

あ、夏でも夜は合いそうですね。
闇がいちばん濃い感じのする季節です。
窓を開けて人口音の聞こえてこない環境はいいですね。

これ系の音は、夏、夜にまったりお酒を飲みながらよく聴いてました。たしかに夏の太陽っぽくはないですね。。
その昔はクーラーがない和室で窓全開だったので、虫の声とかも混じって、かなり気持ちよかったです。コレ、間違いなく愛聴します。

サトキチ様
こんにちは。御返事遅くなりました。as oneを知らないので何とも言えないのですが、試聴されたようなので想像と大外れしていないのでしょうね。夏にかけて聴くには少々不向きかもしれませんが、秋から冬にかけては愛聴盤になると思います。

こんにちは。
聞いたことあるなぁと思って探したら、試聴できました。
こういう音、大好きです。手持ちのものだとAsOneぽいかな??いいのん、教えていただきました。

ishisone様
お気に入りですか、一緒でうれしいです。ほんのわずかだけ仕込まれたノイズがとても心地よいですね。生楽器だけだと、こうはいきません。

cinematic orchestra、僕も最近手に取って、よく聴いています。最近のお気に入りの一枚です。
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