「Fountains」vol.44



JALブランドコミュニケーション。たぶん海外を含むJALホテルに置かれている雑誌。総客室数は2万を超えるそうなので、どれだけの期間置かれているのか分からないのですが、かなりの部数ですね。機内誌はフリークエンシーが高く、これはリーチが高いのではと勝手に想像しています。本文は日本語と英語。巻頭特集が「金沢発・工芸モダンスタイル」ということで、金沢ではないのですが漆で紹介いただいた。
取材にお越しいただいたのは今年の3月。編集、ライター、カメラマンの3人。ライターの方は私について下調べされたようで、このブログにも目を通され、文芸と哲学と音楽の嗜好について予備知識を持っていた。プロだ。なので話がとても早く、ありきたりな「一日のスケジュールを教えてください」(←そんなの日によって変わる、というか聞いて何になる)とか「デザインするときのポリシーやアイデアの源は」(←そんなのこっちが教えてほしいし、私はアーティストでもクリエイターでもない)といった、気分によって答えがころころ変わるどうでも良いことを尋ねてくることはなかった。

ゲンズブールについて話し、パリの話題になり、フランスの物づくり(シャネルの化粧品が蓋の閉まるときの音までもに「設定された理想」があり、それを実現するために努力を繰り返している、といった話)について教えていただいた。なので私も箱について話した。といった感じで本質的な会話ができた。というより、私の本質的な部分を引き出してくれた。上手い取材だった。この記事の冒頭は、このときの話。

健啖で博学であることは明らかなのに、それをひけらかすことはしない。何か話題が出ると、それにうまくかぶせることができる。たくさん引き出しがあって、そのときに最適な引き出しを開けることができる。と文字にするとごくあたりまえのように感じるけれど、日々の私たちの生活の中で、これを実践できることはとても少ない。

私の仕事場は職人的ではなく絵にならないので職人のところへも取材撮影に行くことにしていた。というわけで塗師の岩倉さんのところにお邪魔した。岩倉さんは少し前までポルシェに乗っていた。ポルシェの話でも、上品に盛り上がった。あの空気感はすばらしい。絶対あのライターのほうが物知りなのに、なぜかこっちがすばらしい人間であるかのような錯覚に陥る。という話をねたに、その日の夜は岩倉さんと飲んだ。

文章は、とても私らしさが出たものだ。校正が送られて来たとき、赤ではなくお礼を送ったくらいだ。セルジュ・ゲンズブール、ロラン・バルト、ヴィトゲンシュタイン、そうした名前はひとつでも出ることが稀なのに、3つとも文章に組み込まれている。そして、同じ「好き」でも、セリーヌを好きなのとヴィトゲンシュタインが好きなのとでは私の中での消化の仕方が違うという、簡単なことなのだけれど理解してもらうには難しいことも、既に理解していた。

写真も、うちで撮ったとは思えないほど見事。表紙にまで氷壇盃を使っていただいた。漆器のトビラページ的なところは、arco カップ&ソーサーヒキハリ。奥のほうには乾漆ビアマグ。岩倉氏の手さばきも、かちっと撮れている。ちなみに掲載された商品のうち、氷壇盃とarcoとヒキハリが、下塗りから上塗りまで岩倉氏の手による。彼は茶道具を主に手がけているので、小さなものが得意なわけです。

富裕層向けの会員誌とクオリティが同じ、という言い方は失礼になるかもしれない。特集で掲載されているのは順に、漆は私、金箔は友人の義理の妹である高岡愛氏、金工は西川美穂氏、九谷が吉田幸央氏、和紙が坂本秋央氏、ガラスが辻和美氏。で、ホテル日航金沢の紹介ページに続く。広告は表4がユナイテッドアローズのDARJEELING DAYSで、表2見開きがマイクロソフト。なんとなく解る。下の画像、私の写真は、恥ずかしいのでぼかしてあります。



先日、東京から、たぶんご夫婦が器の購入で訪れた。練馬にお住まいとのことで、練馬の話題で盛り上がり、ご主人が新聞社でイベントを担当している方で、うっすらと広告の話で盛り上がった。「企画を思いついたときがいちばん快感で、それを実施するときの進行になるともう興味がなかった」といった、いくら以前の仕事といっても私の仕事に対する姿勢になるわけで、とてもお客さまに言う話ではないことまで口走ってしまった。奥さまはクラシックの歌手で、帰りに駅まで送るクルマの中で聞いたので、もっと話に華を咲かせたかったけれどクルマが駅に着いたのですぐに終わった。名古屋で唄ったついでに寄られたとのこと。これもすてきな出会いでした。

以前の職業で最後に雑誌に登場したのは「販促会議」2000年8月号で原稿を書いたものです。
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