■砥の粉

とのこ。昔は歌舞伎役者の化粧下地にも使われていた、害のない素材。
古来より京都山科産が最上とされてきました。現在ではほとんどが山科産。白、黄色、赤が出回っています。原料である粘板岩の風化作用の段階によって色が異なります。黒塗りの漆器の下地には白灰色の砥の粉を使うと、きりっとした感じになります。私は漆器づくりの下地の工程で、山科産の砥の粉を、漆と地の粉に混ぜています。それを私たちは錆地と呼んでいます。建物の外壁を塗るときの下地と同じようなものですね、あたりまえですが。錆地を使った下地が本堅地。刃物が役に立たないほど堅いです。

漆器づくりにおいては粉の粒の大きさによって三段階あり、どんつきと呼ばれる手間がかかって非効率な製法で作った角のある粗い砥の粉を混ぜた下地を施して木をがっちりと固め、その上から中くらいのものを混ぜた下地を施し、最後に細かい丸い粒の正に粉末状の砥の粉を混ぜた下地を施して表面を滑らかにします。漆を塗るのは、何と言っても表面に塗るだけなので、綺麗になるか否かは下地次第。毎日仕事をして、ふつうのお椀で1か月かかります。そんなの待てないよ、それにコストもかかるし、漆を塗ってしまえば分かんないんだからさ、というわけで、ポリサイト下地が爆発的に普及しているのです。全商品を昔ながらの下地で作っている漆器屋(作家は除く)は、山中だとうちだけです。世の流れとはいえ、まともな下地職人がいなくて、私は齢八十を超えた職人にすべてを依頼しています。もうすぐ、山中漆器は死にます。
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コメント

lilla様

事実であることを、言わずに隠して後悔したくはないのです。

横浜高島屋は、うちのものもありますし、うちが製作を依頼している職人が「作家」として高い価格をつけているものもありますし、とても手頃なものもあります。特に汁椀は、全国どこでも山中が幅をきかせています。タカシマヤにも525円から1万円オーバーまで、いろんな「山中漆器」があると思います。どこに価値をおいて着地点として購入するかは、人それぞれです。

赤福状態の漆器製造者ばかりになって、まともな職人が育たなくなってしまっています。これは山中だけの問題ではなく国から「伝統的工芸品」と冠をもらったものすべてに当てはまります。伝統工芸と指定されればしめたもの、中身は何でも良いというのが日本の伝統工芸「制度」です。わっぱ、箒、傘、唐紙、もはや風前の灯火のものがたくさんあります。技術はもちろんのこと、それを作る道具も壊滅状態。たとえば、石川県の桐工芸の人に、桐工芸に必須であるはずのうづくりを入手したいと伝えていた時期があったのですが、誰ひとりとして答えることができませんでした。では一体、世にあふれる桐工芸とは何なのか。そう考えると、どの分野も末期症状だなと思うわけです。

Oh!my!

>まともな下地職人がいなくて、私は齢八十を超えた職人にすべてを依頼しています。もうすぐ、山中漆器は死にます。

うわ!大丈夫ですか?!書いちゃって!

こちらを覗くようになってから、デパートへ行って漆器売り場を見るようになりました。横浜の高島屋もたまに行きますが、結構山中漆器って置いてあるものなんですね。

>漆を塗ってしまえば分かんないんだからさ

そういうのがあらゆるところで蔓延してますよね。
バカ福、いや赤福とか(笑)。
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