ジョルディ・サヴァールとALIA VOX



【classic, early music】

スペイン、カタロニア出身のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者、ジョルディ・サヴァール。古楽アンサンブル、Hesperion XXI(エスペリオン・ヴァン・テ・アン;エスペリオンは西方という意味で、ヨーロッパの西の方であるイベリア半島やスペインのことを指す。ヴァン・テ・アンは21世紀なのでそういうことなのだろう。かつてはXXだった)を率いる。そして、自身のレーベル、ALIA VOXを立ち上げた。とはいっても私が意識して聴き始めたのは2年ほど前からなのだけれど。
ヴィオラ・ダ・ガンバは、チェロとは違う。洗練されて進化したものがチェロというわけではなく、まるっきり異なる楽器だ。チェロの音色もかなりのものだが、幽玄で深遠、繊細で可憐、なおかつ情感と哀切を感じるのは、ヴィオラ・ダ・ガンバだ。私が何かひとつ楽器を演奏するとしたら、バンドネオンとコンガとトランペットとピアノと迷いに迷ってヴィオラ・ダ・ガンバを選ぶだろう。半径150キロ圏内に、教えてくれるところがないのだが。クイケン兄弟のヴィーラントが弾いているものや、今では大御所指揮者のアーノンクールが弾いているマレの曲集は、私の愛聴盤でもある。

ALIA VOX=エスペリオンXXIは、最近になってモーツァルトも録音した。しかし、このレーベルの最大の特徴は、古楽だ。それもルネサンス以前。スペインを中心として地中海全域に亘り、世界的な知名度や人気など意に介さず、歴史に埋もれたすてきな曲を聴かせてくれる。ふつうのバロックもラインナップは豊富。でも私は変わったものを聴きたいからこそALIAVOXに用がある。

ルネサンスのころまではイスラム圏だった、スペイン。
キリスト教になってからのほうがまだ歴史は浅い。
スペインとアフリカを分けるジブラルタル海峡は、とても狭い。



私のお気に入りたち。
カタログ番号は「AV」のものがCDで「AVSA」はSACDです。
邦題などの表記は日本盤がないので正式なものではありません。
私の好みで、宗教曲よりも世俗曲のほうが多いです。

■サヴァール/ラ・フォリア HMV→
AVSA9805
恐らくアリア・ヴォックスで最も売れているアルバム。ヴィオールとカスタネットの音色でノックアウト。尋常ならざる郷愁が襲いかかる。日本人なのに。ラ・フォリアというのは曲の名前で、収録曲すべてがラ・フォリア。でも飽きない。

■サヴァール/サント・コロンブ2世 無伴奏バス・ヴィオール組曲 HMV→
AV9827
二枚組、全六曲の無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバ組曲。サヴァールの独擅場。渾身の演奏。ヴィオラ・ダ・ガンバはイタリア語。フランス語だとヴィオール。巧いし、静かに激しい。無伴奏ヴァイオリンやチェロが好きなら、絶対おすすめ。今はマレのヴィオール曲集と合わされたお得な三枚組もあります。

■サヴァール/エルチェの神秘劇 HMV→
AV9836
中世から今もずっと毎年8月14日と15日の二日に亘って演じられ、世界遺産に登録されているエルチェの神秘劇。口承伝承で残るこの劇を、史料を基にサヴァールが校訂。完全版が望まれる。一度は現地で聴きたい。

■エスペリオンXXI/その他のフォリア HMV→
AVSA9844
「ラ・フォリア」の続編。もちろん全曲ラ・フォリア。重複しているのはコレッリの1曲だけ。作曲年代は1490年から1701年。驚くべきことに、曲調に幅が出ている。こういうのを続けたから洗練されていったんだなあと実感。

■サヴァール/東洋-西洋(1000-1600) HMV→
AVSA9848
これは楽しい。アラブ音階もある。東洋とは今で言う中近東。別々の土地で暮らし、混ざることのなかった人種。というわけではなく、大昔から地中海の周りは混ざっていた。イスラム勢力になったりキリスト勢力になってルネサンスを捏造してきたに過ぎない。なんやかんやでいちばん聴いているのはこれ。

■サヴァール、エスペリオンXXI/エスタンピーとダンス・レアル HMV→
AVSA9857
古い古い時代のダンスミュージック。単純な旋律の組み合わせと繰り返しは、ハウスと構造が似ている。吟遊詩人の素朴な演奏で、街のみんなは踊り出す、という紋切り型な光景を思い浮かべる。平和な気持ちになる。

■サヴァール、エスペリオンXX/パーセル ヴィオールのための幻想曲集 HMV→
AVSA9859
オリジナルアルバムでは今のところ最新リリース。SACDマルチチャンネル。より大きな音を出すために発達していった西洋楽器。古楽器を使った室内楽ならではの、音色の美しさ。弦楽五重奏とか好きな人なら、聴いてみても損はないかもしれないような気がします。

■サヴァール/夜への祈り HMV→
AV9861
アリア・ヴォックス・レーベル創立10周年記念アルバム。これまでのリリースからおいしいとこ取り。おまけにアリア・ヴォックス設立前の音源も。二枚組で1647円。CD1は声楽曲、CD2は器楽曲。手っ取り早い一枚。

ものすごい勢いでリリースを続けていて、どれも音質が非常に良い。しかもSACD化に積極的で、マルチチャンネル録音も非常に上手い。曲のセレクトが重箱の隅のようでかゆいところに手が届くというか、そんなところがかゆかったんだと気づかされるような感じ。楽器の音色と演奏は文句なし。ケースは美しいデジパック。全く読めないけれど、ライナーノーツは懇切丁寧な小冊子。というわけで、信頼できるレーベルのひとつ。理想を追求するために自らレーベルを立ち上げた情熱が伝わる。高いけれど、安い。




ALIA VOX 公式サイト (音が出ます)
Youtube Hesperion XXI Ancient music
(ギターはロルフ・リズレヴァント。テレビ画面を撮ったものですが、音質と画質の悪さを感じさせません)

参照Wikipedia
ジョルディ・サヴァール
フォリア
エルチェ
エスタンピー
関連記事

コメント

非公開コメント