■図面

イラストレータで描いています。
ろくろで挽くものがほとんどのため、上から見たら円いものばかり。
そのため断面図しか描きません。

※ところどころ読みづらい文です。最後に意図を説明してあります。
「カーブは半径何メートル」とか「ここからここは直線で、長さ何ミリ」とか記載しても職人は機械ではないからそんなふうに挽かないのでむしろ邪魔。なので真っ白です。数値は直径と高さだけ。あとは素材と、仕上げ方法(種類の違いで挽くのも変わる)を隅に書いておくだけです。職人にとっていちばん知りたいのは、それを何個作るのかということなのですが、私は2つか4つくらいなのでいつも申し訳ありません。

しばしば、パソコンで線を引いて簡単そうだなと思われます。そりゃまあ手描きで完璧な曲線や直線は描けないのですから簡単です。パソコンに向かっているときは「作業」としては何の苦労もありません。しかし、誰でも描けるからこそ難しいのです。デジカメがあれば誰もがカメラマン気分に浸れるけれども、別にどうということのない画像ばかり、やっぱりプロの写真は違う、というのと同じこと。ワードか何かで年賀状を作るときに、画像を大きくしたり小さくしたり、上にもっていったり全面に広げてみたり、文字はフォントと色を変えてみて、囲んでみたり影をつけてみたり斜めにしてみたり、いい感じになったらできあがり、という手順と同じことなわけです。

パソコンがデザインしてくれるわけではなく、頭の中にあるものを描いてデータにするのがパソコンです。私が手描きしないのは、フリーハンドでは一回で完璧なラインなど描けるわけがないことと、データには複製性と保存性があるからです。などと偉そうなことを書いていますが、なかなか最善の解を導き出すことができずにいます。

複製性とは「こども向けのお椀をさがしている」と問い合わせがあったときに、過去にひとり暮らしの女性向けのお椀をデザインしたときの図面を流用する、といったことです。とはいっても単純に縮小するのではなく、線を引き直します。木でできたお椀の縁、口があたるところは、拭漆なのか下地を施して塗るのかにもよりますが、できれば4ミリ、ぎりぎりがんばって3ミリの厚さが必要です。そういったところを調節し、子ども向けなら縁の円みを増し、安定性を増すために高台を広げ、高台付近の角度を水平寄りにして、割れにくいように断面を厚く(ボウル面が狭くなる)します。それでいながら、斜め上から見た(ふだん目にする角度)全体の印象は縮小する前と変わらないもの。といった流用です。こういうふうに頭の中の引き出しにある方法論で済むなら、半日(デザイン作業は夜中が多い)あればできます。で、それを1客だけ作って数千円なのですから原価を引いた上で自分の「仕事」の時給を計算するなどおそろしくて絶対無理。まあいいや。それが好きだからとしか言いようがないです。

断面図として美しい曲線と、それが円錐のような立体となったときの美しさは異なります。曲線のふくらみが少し変わっただけで、ボリューム感は大きく変わります。下品なラインもあれば、凛としたラインもあり、たおやかな曲線もあります。直線の中にも、安っぽい直線があり、重厚感ある直線があり、軽快な直線があります。それは何故かというのは省きます。商品の意図と切り離せないものなので、ふだん口は悪いし屁理屈な印象の私ではございますが、実現してくれる職人の存在を非常にありがたく思っています。絵に描いた餅では食べていけませんし、私は山羊ではありません。

あるアイデアを思いついたとき、手描きでメモします。忘れちゃうので。で、その中から意味のあるものをピックアップします。ここはマーケティングの分野なので省きます。全体のかたちを大まかにイメージして、うまくイメージが具体的になったら描き始めます。イメージが先にあって、それを図面に落とすわけです。図面を描きながら(根拠なく偶然に頼って)形を決めるのではなく、二次元への変換作業なのです。

とはいっても、イメージが具体的であろうが、断面のライン(側面のライン)など決まっていません。何度も線を引きます。山中漆器は入れ子になった器を得意としていて、私もいくつか作っています。また、スタッキングしやすいか否か、傷がつきにくい積み重なり方か、扱いやすい接触具合か、といったことも、機能性のひとつです。ある大きさの、ある(全体的な)かたちのものにおいては、それら機能をクリアし、数学的にも美学的にも美しく、なおかつ木に変な力がかからない(変形しにくい)断面、というのはひとつしかありません。ひとつの商品で2年かかることもあります。

いま私は、カップのデザインをしています。思いついてから既に3年以上経っています。データファイルの作成日は2004年の年末です。テレビの地上波が終わるまでには試作できたらと思ってはいるのですが、どうなることやら。はやく実物を見たい。


※図面の話なので見た目を優先し、文章を箱組みしました。私は2台のパソコンを使用していて、どっちでも四角くなっていたのでモニタのサイズが変わっても崩れないと思いますが、単にfc2のテンプレートのひとつを使用して文章を流し込んでいるだけなので、フォント設定を変えてある場合などにどうなるのか詳しくは判りません。

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コメント

ばかもーん、そいつがルパンだ。

漆器祭にいませんでした??

i様
内容ですか、箱組みですか?
新聞連載小説に比べれば、
この程度の文字数合わせは作業でも何でもないです。

お見事。
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