■だいじょうぶ

漆器は熱に弱いイメージがあります。
 
石油溶剤で薄めているのに「天然漆100パーセント」と表記しているもの。
世の中には、そんな漆器が多い。それらは変色しやすい。

ほんとうの漆は、熱にも強い。
私は、どれだけ熱にもだいじょうぶなのか、帰郷してから自分で使って試しています。熱い液体、揚げたてのもの、焼きたてのもの、ぐつぐつ煮込んだもの、などなど。黒、朱、洗朱、錆朱、溜、木地呂、木出し、拭漆、金箔。塗ってすぐのもの、塗って半年たったもの、紫外線を浴びて変色したもの、などなど。組み合わせのパターンはたくさんあります。

変色しようがしまいが使ってしまえば売り物ではなくなるので、無駄になるものがどんどん増えていく。でもこれは私にとって研究開発費のひとつだと割り切っている。とはいってもそれをコスト計算して商品価格に上乗せしているわけでもない。なので家電製品のように最初は高価だけれど次第にこなれていくということはありません。

自分が売っているものがどんなものか把握しておかないと気持ち悪い。

エスプレッソは、90度のお湯で抽出して約70度になる。まったく問題ありません。油と塩が多いスープは何度になっているのか分からないのですが、問題ありません。揚げ物も、一旦油を落としてから黒や朱なら問題ありません。溜塗りや木地呂は白濁します。

吹きつけで塗った「漆」は、石油溶剤を混ぜています。スプレーガンからの通りを良くするためと、かさを増してコストを抑えるためです。あるとき私は、とある店に、吹きつけで木出し仕上げ(目はじき)にした器を持参し、焼きたての食べ物をのせていただきました。黒塗りの器は、食べ物をのせた箇所だけ変色しました。店の人もびっくりです。その食べ物よりも温度の高い食べ物は世の中にたくさんあり、家庭でも口にする天ぷらや唐揚げなども高いでしょう。それらが軒並み駄目ということになります。

ほんとのところはどうなのか、実際に試してみないと判りません。その上で私は「だいじょうぶですよ」と言っています。駄目な場合も、自分の実体験と、実体験に基づく仮定を仮定とお断りした上でご説明しています。

漆器を購入するときには、いろいろと質問してみてください。何度までならだいじょうぶなのか、たとえばどんな料理ならだめなのか。そのことについて「あまり熱いものだと変色するかもしれません」といった曖昧な返事しかできないようでは製造者責任皆無です。

「漆器は丁寧に扱うものだ」というのは作り手によるイメージ操作に過ぎません。

私の説明とは異なったレベルで変色した場合は、送料着払いでうちへ返送してください。原因を調べ、漆の質を精査し、塗り直し、お送りします。塗り直しができないものは、作り直したものと交換します。

分子構造を破壊した「MR3」や「純漆」と呼ばれるものは、熱に強いのでこういったことなど気になりません。食洗機で乾燥したってだいじょうぶです。ただ私は、まだそれらは使いたくはありません。
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