ロマーン・ヤコブソン「音と意味についての六章」



構造人類学者で実存主義を駆逐したレヴィ=ストロース。何とびっくり11月28日で100歳になる。亡くなったという話が世界のどこからも出ないので、生きているのだろう。そんなわけで今年はいろいろ刊行されている。これも記念復刊のひとつ。20ページ近い序文が、レヴィ=ストロースの手による。

音を発すること、すなわち言語について、これほど簡潔に書かれたものはない。ニューヨークの高等学術自由学院での一学期分6回の講義をまとめたもの。というか、この「覚え書き」を基に講義を行った。レヴィ=ストロースは、この講義を聴講していた。

構造主義によって言語を明るみにしていたヤコブソン。構造主義によって西洋中心主義の人類学(白人が文化的で優れているという西洋人の考え方)をニュートラルにしたレヴィ=ストロース。

エドガー・アラン・ポーの有名な詩「大鴉」で繰り返される“Nevermore”について語り始め、4ページ目で早くも所記と能記についての説明がなされる。それからはヤコブソンの話に耳を傾けているだけで、突っ込みどころのない結論へといざなわれる。読みやすく解りやすい150ページ。こんなのを2800円(+税)で読めていいのだろうか。

ロマーン・ヤコブソンはロシア生まれ。ロシア・アバンギャルドを経験し、名高きモスクワ言語学サークルに加わる。構造によって言語を研究するソシュールの方法論を用い、サークルで台頭。ロシアの政変に伴いプラハへ行ってプラハ学派に触れ、音声学と音韻論を確立。戦争でスカンジナビア経由でニューヨークへ行き、移民のコミュニティである高等研究自由学院にたどり着く。その後はハーバードやマサチューセッツ工科大学で教えた。

この書籍には、彼のエッセンスが詰まっている。
ひさしぶりに読書の快楽を味わった。

これを読んだあと、言語についてもっと、と思ったら、ソシュール「一般言語学講義」に結局は辿り着くだろう。知の塊が解りやすい語り口で綴ったものを読む快楽を、と思ったら、レヴィ=ストロース「悲しき熱帯」がおすすめ。フランスで最も権威ある文学賞のひとつゴンクール賞の選考委員会(アカデミー・ゴンクール)が「フィクションでないのが超残念」と正式にコメントしたくらい、文芸作品としても優れている。

001 序 クロード・レヴィ=ストロース
023 調音音声学と音響音声学
047 音韻論の誕生
073 音素の特殊性
101 音素は弁別特性の束である
125 能記は果たして線的か
149 言語記号は恣意的か
159 訳者あとがき


参照;
ロマーン・ヤコブソン
言語学
音声学
音韻論
構造主義
プラハ学派
フェルディナン・ド・ソシュール
クロード・レヴィ=ストロース
悲しき熱帯
ゴンクール賞
ニコラ・ブルバキ
群論
クラインの四元群


Roman Jakobson
Claude Lévi-Strauss

みすず書房 レヴィ=ストロース生誕100年
みすず書房 音と意味についての六章
みすず書房 ロマーン・ヤコブソン

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コメント

i様
どこのどなたですかね「レビストロース」って。
文字数を少なくするのが新聞記事を書く技術といっても
そこ変えちゃ訳わかりませんね。
通信社がその名前で配信したのかなあ。

朝日新聞に載ってたよ
「レビストロース」氏100歳で祝賀行事て・・・

i様
そういえばそうですね。まるっきり別物で考えていました。日本の先生は身近に接していて、海外のビッグネームは書物でしか触れることがありません。しかし、なんでって言われても……わからないです。予備校が出している「実況中継」に代表される、受験「勉強」の本ならありますね。その営みの違いが、日本と欧米の違いなのかもしれません。ご質問の意図は、それが何故かというのとなのでしょうが……。著作、論文、授業、その三つを分けて考えている人が多いのかなあ、ほんとによく解りません。大学の授業は、乱暴に計算して4年で400万円で150単位とすると、1コマ90分が3000円程度。DVDで出すくらいのつもりで講義してほしいものですね。

ヴィトゲンシュタインの講義録があったらおもしろそうです。椅子に座ってたり立ち上がってうろうろしたり。10ページくらい白紙が続いたりして。で、何やら叫んで部屋を出て行く。講義録にならないですね。

ヤコブソンもレヴィ=ストロースもバルトもフーコーもだけど、あっちの人って講義録もおもしろいよね。でもって、日本の先生たちはそんな本を出さないよね。なんで?
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