Arve Henriksen/Cartography



【ecm】
ECM2086

冬になると恋しくなるECMの音色。
Arve Henriksenはノルウェーのトランペット奏者。そしてECMとくれば得意の余白たっぷりで静謐なジャズ(そんなECMの象徴ともいえるヤン・ガルバレクは大好きです)だろうと思いきや、これは全然違う。なのに毛色はECMという離れ業。トランペットとパーカッションがメインで、そこにサンプラーの音源をまぶし、声やギターやシンセで味つけしている。

2曲目と11曲目では、ロックの生き仙人デヴィッド・シルヴィアンが唄っているというか話しています。曲の素材になりきっています。記憶よりも声が掠れて低いことに少々びっくり。他にも中世歌唱アンサンブルのトリオ・メディーヴァルもvoiceで参加。The Art of Noiseがアラン・パーソンズをプロデューサーに迎え、北欧ジャズをやったらこんな感じになるような気がする。するけど、やっぱり違う。

無機質な打ち込みで、完全なフロア向きなのに「アンビエント・ジャズ」なあんて自称している人たちは巷に少なくないけれど、これこそアンビエント・ジャズに外ならない。そして、トランペットとパーカッションの音は加工していない。そこがいい。音を加工してクラブ向けやアンビエントにすることは簡単だから。また、この手の音楽には、ついついドラムンベースのリズムをつけてしまいがち。それをやらないところが賢く、そもそも方法論が真逆なのだろう。

ドラムンベースやハウスのバックトラックを打ち込みで作り、そこに管楽器を鳴らせばクラブジャズのできあがり。管楽器の音色もエフェクタで変えてサンプリングもしちゃえばモダンジャズに慣れてる人は驚く。なんていう安易なことをやってる日本人もいる。

クラブミュージックのリズムがないと間が持たないというか曲として成立しないのであれば、それは曲として出来が良くないということだ。ちゃんとした曲なら、そんな余計なものを付け加えなくても優れた曲。

クラブミュージック側によるジャズへのアプローチは、機械頼りの部分が多くて、何でもできてしまうからこそやるべき音を思い描いていないと凡庸になる。ジャズとクラシックと現代音楽で独自の地位を築いているECMだからリリースできる音楽。

アタックの激しくない低音が、まさにコンティヌオとして流れる。とてもとても心地よい。ちゃんとしたオーディオで聴かないとすっかすかのつまらない代物に聞こえてしまうところも、現在の音楽鑑賞環境を無視していて小気味よい。


Arve Henriksen 公式サイト
ECMレコード 公式サイト
関連記事

コメント

非公開コメント