Around the world in a day



というのはプリンスが1986年くらいに発表した60年代サイケ風味漂うアルバムのタイトル。
 
ロードバイクのところで書いた通り、私の住まいは海外から日本へ来て自転車旅行をする人たちの無料宿泊所に登録している(リンク)。月に2通ほど問い合わせをいただく。ほとんどが英語で「ハーイ、ワタシはトーキョーからキョウトまでジテンシャで旅しようと思ってるんだ、で、あなたのところでサーフィンしたいんだけれどできるかな? サクラは観られるかな?」とかいういろんな意味で非常に複雑なものばかりだ。でも海外の人とやりとりするのは楽しい。私は、できるだけ日本での旅が良き体験となるよう、ニホンカイは波が小さいからサーフィンはできないよ、それにトーキョーからキョウトまでの間にうちに来るとえらい遠回りだよ、うちからキョウトまでは125マイルあるから荷物を積んだバイクで1日で行けるかどうかはあなた次第だよ、どっちかというとシズオカのエンシュウナダで波乗りしたほうが楽しいよ、桜は無理だよ、たぶん日本中無理だよ、とか返信している。2か月滞在したいとか、言っては何だけれどなかなかあつかましい方もいらっしゃる。それはもはや無料宿泊ではなくホームステイではなかろうか。

昨年の夏、なぜか辻堂在住の日本人までもが泊まった。私の住まいを出発して(バナナを2本差し上げた)からも連絡をいただき、もう鳥取かよと私は驚いていた。その方からCDが送られてきた。正確にはCDRである。手紙には私のことを覚えている内容もあり、単に配布しているだけではないことが窺えた。手書きの手紙は良いものです。私も手書きが多い。私はサイトを2003年に開設した。全ページがフラッシュで、一部では絶大なる評価をいただき、大多数からは私ひとりでは抱えきれないほど不評をいただいた。色数を減らし、なるべく軽くした。でも、ウィンドウズ95で閲覧しようとすると待ちぼうけを強いられるページだった。あのころはまだパソコンを使うことのほうが割合として少なかったから、パソコンでできることをやったのだ。それをストレスなく観ることのできる人だけが観ればいいという感じだった。ネットやパソコンが発達だか普及だかがすればするほど、こんどはアナログが希少になっていく。なので私は手書きに戻った。CD(正確にはCDR)のお礼も葉書に手書きした。ブログも手書きしたいくらいである。

またいつものように話が逸れた。


漆器屋に納まった、辻堂の方の自転車。自転車は室内保管が原則。たとえ一晩であっても。いたずらされたり何かを盗まれたりしたら、加賀がヨハネスブルグなイメージになってしまう。それにメンテナンスや空気圧のチェックも必要。それにしても、手首の姿勢を変えることのできないストレートなフラットハンドルで全国を周るとは、強靱な手首の持ち主である。私には真似できない。サドルはスペシャライズドの、たぶんジェル入り。サドルは私のほうがぺらぺらで硬いものを使っている。

辻堂の方は、店の2階にある四畳半の茶室スペースでお眠りになった。茶室スペースなので水屋があるし洗顔歯磨きもその人のタイミングで気兼ねなくできる。畳だったら自転車旅行をしている人だと寝袋で寝ちゃう。布団の用意など不要。外国人だったら漆器に囲まれておもしろがる。ニッポンのテーブルウェアを見て触れてくれれば、私としてもまた楽しからずや。

送られてきたCD(正確にはCDR)は、50分で世界一周ができるというコンセプトのもと、辻堂の人が選曲したもの。50分ということは時速4万キロ以上で移動していることになり、プリンスよりも28倍速い(ふだんから私はしょっちゅうこういう何の役にも立たない計算をしている)。東アフリカ、西欧、北欧、南米、中米、北米、日本。私の好きなモンゴルやポリネシアやアラスカやインドネシアや蝦夷が入っていない。かといって不満なのではなく、あまり手にしない地域を聴くことができるので反対にとてもうれしい。なのでここで取り上げた。



私のCD大分類方法は、国別ではなくクラシック、ジャズ、その他と分け、それからそれぞれをアルファベティカルに並べている。「その他」のところには、約160か国の音源がある。世界中の音楽を聴きたいという単純な動機によってそうなった。今ではインドの北の方か南の方か、アフリカの東部か西部か、それくらいは判るようになった。ピグミーの歌や親指ピアノやセネガルのグリオなど、西洋的な考え方で行くと「ジャンル」になるものは誰だってすぐ覚える。

こういう音楽は西洋の商業とは無縁のものなので「アルバム」という概念がない。また話は逸れるが、なぜアルバムと言うかというと、レコードだからだ。記録するのはアルバムである。コンパクトディスクから話が変わってきた。でまあそんなわけなので、なかなか1枚でいい感じになることは少ない。雅楽も同様。それは現代の日本で暮らす我々の都合に過ぎない。というわけで、いわゆる民族音楽は、1曲だけでも満足できる。興味を持ったらその地域の音源を集めればいいだけだ。商業性ゼロ、それでお金を儲けようとなんて微塵も思っていない歌と演奏。どの地域も、とてもとても楽しそうであり、あるときは非常に真剣。レコード会社はぼろもうけな気もするけれど、大して売れないだろうし、自分で聴きに行こうと思ったら大変なのでありがたい。でもときおり、地産地消の邪魔をしているような気になることもある。



「プリウスでハイボリュームできいてくれたらうれしいです」と手紙にある。話は飛ぶが、私はSF小説だと宇宙空間で戦争したりするスケールが大きくて派手なものよりも、J.G.バラードのように内面世界を探求するものやフィリップ・K・ディックのように頭がくらくらするのが恐らく基本的に好きだ。音楽を聴くときは何もせず、時には目を閉じて聴く。自転車に乗っているときは、アンダーワールドのライブ盤“Everything, everything”(←リンク先の動画には私も映っている。4分後半のブレイクから大盛り上がり大会に突入してからすぐです。ちなみに歌詞も良い。アンダーワールドのライブ盤がDVDとしても畢生の大傑作な理由は、ライブをそのまま収録するのがライブ映像の常道だったのにデザイン集団だからこその映像処理によってめくるめく美しさをまとった、からではない。ドラッグがつきまとうダンスミュージックは暗くて狭い地下のクラブで秘密裏に愉しんでいたものだったのだけれどDVDでは世界中の野外イベントを繋ぎ合わせて健康的に肉体的に解放したからだ。全てを完璧にできる屋内施設でのライブのほうが比較にならないほど回数も多いし、ライブそのものとしても商品としても良質だ。だが彼らは野外イベントだけで繋いだ。このことを指摘した人はまだいない。最も有名な曲“Born slippy”はドラッグが効いているときを表現した秀逸な歌詞で、これはドラッグだから駄目とされるのではなく逆説的なアプローチだ。ラリっている真っ最中に大麻所持容疑で家宅捜査を受けたときのことを歌にした井上陽水の「夢の中へ」とは何もかもが正反対)を全曲頭の中で再生している(アンダーワールドの曲はBPMが135から140の曲が多く、私の自転車走行時における脳内再生ナンバーワンである“Cowgirl/Rez”も138BPMで、曲に合わせてケイデンス138rpmで走れるわけがなく、私の中で流れるCowgirl/Rezはいつも遅い。下手すりゃいつのまにか曲に合わせて二拍とってケイデンス69である)。クルマを運転するときは、どうでもいいロックや二束三文のポップやテクノを流す。せっかく50分で世界一周できるのだから、住み慣れた近所の風景を目にしながら(クルマの運転は目を閉じていてはできない)流すよりも、部屋でトリップしたほうがいい。

1999年7月3日、フジロックフェスティバル。ホワイトステージの大トリはアンダーワールド。最後の曲はもちろん“Cowgirl/Rez”だ。映像はこちら。こっちにも私は7分30秒台で映っている。このアレンジもブレイクが長くて格好いい。こんなちんけな映像ですら目にして耳にすると、私の記憶は汗を流し、心は涙を流す。この日は公式発表で10万人が苗場に集結した。クラブでは絶対に無理。世界最大のディスコは、確かイビサ島にある1万人収容のPriviledgeだったはず。

そんなわけで、私が使っているイタリア製のCDプレーヤーはCD以外のものをかけると機嫌を損ねる繊細で小悪魔でおてんばラテン娘でグルメなので、何をかけようが見た目がCDだったらオッケーという、リージョンフリーに改変したマランツのDVDプレーヤー(海外でも同じモデルを販売しているマランツのDVDプレーヤーは、できあがった製品を各国のリージョンコードに合わせてあるだけだ。なのでちょっとしたリモコン操作でリージョンフリーにできる。うさんくさい激安中国製を買うくらいならマランツのほうが画質も音質もまだまし。おかげで私は日本版の高価なDVDを購入せずに済んでいる。テニスの試合や自転車レースのDVDなんて日本人の解説や字幕なんてむしろ不要だし、何といっても価格が3倍から5倍する。どっちも公式映像で変わりがないのに)で流し、ラムを飲んだりアクアヴィットを飲んだりして、部屋にいるのに結局は忙しいことになっているのでした。

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コメント

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「夢の中へ」てそういう曲だったのね
フジロックベスト3を教えてください
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