Sonic Youth/the eternal 



【rock&pops】

Spirit desire
Spirit desire
Spirit desire
We will fall

欲望にスピリットを
欲望にスピリットを
欲望にスピリットを
わたしたちは、楽しくなる

 -sonic youth“Teenage riot”

ソニック・ユース、20枚目くらいのアルバム。
 
ニューヨークのアート。古くはアンディ・ウォホール=ヴェルヴェッツ、テレビジョン、パティ・スミス。ニューヨークのアートには、いつもロックがセットだった。現在の担当はソニック・ユース。現代音楽家グレン・ブランカのギターワークショップで知り合ったメンバーがバンドを結成。PVでは映像作家を、ジャケット写真には写真家の作品を採用。ゲルハルト・リヒターの写真をトリミングしちゃったもんだからトラブルになったこともある。

1985年、イギリスではジーザス&ザ・メリーチェインがギターノイズを音楽に昇華した。それは明らかにドラッグでらりぱっぱの状態を音楽にしたものだった。同時期に、というかソニック・ユース自体は1980年に1stアルバムをリリースしているので前からいろいろやっていたのだけれど、ソニック・ユースは理知的にギターノイズを音楽として機能させた。

既に何度か書いてる気もするが、電車に乗ると眠くなるのは椅子が暖かいからではなく、ノイズのせいだ。生まれる前、羊水にいたころに聞いていた音と似ているからである。なのでノイズは決して禍々しいものでも極悪なものでもなく、常に寄り添う存在とも言える。ものすごく速いのもあれば、止まっているのもあり、うごめくものもある。ソニック・ユースのノイズは、疾走感だ。それもロケットや飛行機の速度ではなく、人間が思いっきりダッシュしたときの疾走感だ。

こういうことを長々と書くと、頭がおかしいのではないかと思われるのでやめる。

ギターノイズの洪水“Badmoon rising”や、知的ユーモアの思いつきで作った別名義リリースの“The Whitey Album”、そして私の心の中にずっと流れ続けている“Teenage riot”から始まる傑作“Daydream Nation”と、1980年代のソニック・ユースが作り上げたアルバム群では3枚が私にとって特別。「あんたのために子供たちが速度無制限の国家を準備しているよ」という大人へ向けての歌を私は18歳のときに聴いた。

かつてザ・フーは「ジジイになるくらいなら死んだ方がマシ」と唄った。
でもそれは私にとっては歴史の中でのできごとに過ぎなかった。
(もちろんザ・フーは大好きだ)
ソニック・ユースの「ティーンエイジ・ライオット」が私たちの世代の歌だった。

そしてオルタナが勃興し、悲劇への幕が上がる。ソニック・ユースはメジャーレーベルに移籍してそこそこヒットするようになり、商業化が進んだ。それらに私の心は揺れ動かなかった。同時に彼らは実験的なアルバムも出していた。そっちには「現代アート」という言葉にまとわりつく嘘っぽさを感じていた。

お台場が会場だった2回目のフジロックフェスティバル。
のっぽのサーストン・ムーアがギターをかき鳴らしながら唄っているのを、
ポーティスヘッドのベスに次いで私はかっこいいおばさんだと思っているキム・ゴードン(1953年生まれ)を、
私は芝生に寝ころんでワインを飲みながら遠目で眺めていた。

かつて心を揺り動かされたものが、そうではなくなる。
これはとてもかなしいことだ。

私はソニック・ユースに見切りをつけ、
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやフライング・ソーサー・アタックや不失者のギターノイズ、
そしてスペクトラムなどのずぶずぶのサイケデリアに耽溺していった。

そんなわけで私は何だかんだで四半世紀ソニック・ユースを聴いてきたのだけれど、
ここ20年は、出たら買うだけに過ぎなかった。

今回の新譜もそうだった。
でも聴いて驚いた。
1990年までの彼らがいた。
もう53歳のサーストン・ムーアと56歳のキム・ゴードンなのに。
初期衝動に伴うある種の青さが蘇っている。
最初の一音から、ソニック・ユースのギターだ。
それでいて、かつての音とは異なり、いまの音楽になっている。

とにかく突っ走った疾走感「だけ」ですばらしい音楽になりうることを証明した“Teenage riot”から20年。
リズムは落ち着き、ノイズには秩序がある。
それでもやっぱり、チューニングやコードはちょっと変。
ノイズを聴くのも快感、
ノイズを気にせずメロディとリズムを聴いても快感。

ロックの衝動。20年ぶりの快作。
リリースもメジャーではなくインディに戻った。

3曲目はビートニクの中でも知名度の低いグレゴリー・コルソ(Gregory Corso)に捧げられている。
ジョナス・メカスはコルソの映画を作った。
やっぱりソニック・ユースはそっちのほうの人脈がお好きらしい。

私はギターノイズが好きだ。
アーリーミュージックやクラシックやジャズやエレクトロニカも大好きだ。
世界各国の民族音楽も好きだ。
こうしてブログで分かったようなことを書いている。
でも、ロックがいちばん体にしみついている。

クラシックはヴァイオリンをはじめとする弦楽器で
ジャズはトランペットをはじめとする管楽器とするならば
ロックはギターだ。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのノイズは真っ赤だ。
スペースメン3のノイズは極彩色だ。
フライング・ソーサー・アタックのノイズは青い透明だ。
不失者のノイズは真っ暗闇だ。
ソニック・ユースのノイズは薄い灰色だ。

野山でもコンクリートジャングルでも、
走れば景色はそんな感じになる。

SONIC YOUTH:公式サイト
Wikipedia:ソニック・ユース

Youtube:Teenage riot
20年以上演奏し続けている曲の、たぶん最新映像。
キム・ゴードンもサーストン・ムーア50歳を超えている。
おしどり夫婦とはまさにこのこと。
他の多くのロックバンドのおっさんとは全然違う。
ふつうにサーストンは美大生だ。
キム・ゴードンはミニスカワンピで素足でノーメイク。
それでこのかっこ良さ。
着飾ったおばさんとは大違いだ。
日本だと誰にあたるのか……思い浮かばない。
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