The Great Picture

TdF is over.
 
すばらしい写真と聡明適確なキャプションで綴られるブログ“The Big Picture”は、多いときには1000件以上のコメントがつく。炎上しているわけではない。ル・ツール・ド・フランスの写真がアップされていて、やっぱり美しい。自転車に興味がなくても観てみてほしい。他のエントリもすばらしく、日蝕の写真も事件の写真もすてきだし、キャプションを読むといろいろ考えてしまう。

6枚目の写真、Bradley Wigginsが乗っているバイクは私が乗っているバイクと同じ設計のもので、そんなこともあってやっぱり少し気持ちが入り、総合優勝や各色ジャージやステージ優勝とは無関係ながらも(タイムトライアルでは少々期待したけれど、これもやっぱり私の好きなファビアン・カンチェラーラが圧倒的だった)、観ている間はチェックしていた。ピレネーを越えても総合上位から落ちず、アルプスでも大崩れすることなく、総合4位となった。山登りできるように体重を6kg落としたそうだ(筋肉も質量があるので、ヒルクライムが得意な選手は軒並み細い。186cm67kgなんてのばかりである)。表彰台まであと数秒だったのだけれど、ツールとしてはランス・アームストロングが表彰台というほうが盛り上がるのでまあいいかという感じでもある。Bradley Wigginsはロンドン生まれで、彼のTwitterを読むとレース前にJoy Divisionを聴いていたりしてなかなかユニークだ。あれを聴いて鬱になる日本人は聴き方がおかしいのかもしれない。ちなみにウィギンズの奥さまもTwitterをやっていて、毎日かなりおもしろかった。無事にいまごろ夜のパリでデートできていれば良いのだけれど……。話が逸れた。写真の話。

The Big Picture: 2009 Tour de France

この写真たちの美しさにはふたつの理由がある。

ひとつは、写真の上手さだ。これは芸術としての写真ではなく、報道写真だ。それでこのクオリティ。すぐ欧米と比べて日本はどうのこうの言うのもあまり好きではないのだけれど、自転車出版業界の写真はもちろんのこと、あらゆるスポーツ報道の分野でもこんな写真にお目にかかることはできない。なぜか。写真の勉強をしたことがないからだ。

そしてもうひとつは、国土の美しさだ。どこを撮っても文字通り絵になる。決定的に異なるのは、看板と屋外広告の少なさだ。私は広告業界にいた人間だしバスをラッピングするということにまで加担していたのだが、日本はもっともっと屋外広告条例を厳しくしたほうが良いと考えている。海外から来た人たちを案内するときに恥ずかしいったらありゃしない。これじゃまるでブレードランナーで観た日本への先入観そのままである。また、フランスに限らず欧州は信号が少ない。では交差点はどうしているのかというと、ラウンドアバウトだ。これはもう日本では無理な話だと私は諦めている。秩序が前提になっている欧州の交通というか道路利用と日本のそれは全く異なるからだ。こうしたフランスの風景を観ているだけでおもしろいという人もいる。毎日ひとつはお城を紹介する。山に建つ城は古くて防衛のため、平地に建つ城は新しめで権力の誇示、ということもよく解る。

ツールは新聞社のイベントであり、要は読売新聞の箱根駅伝と成り立ちは同じなんだけれど、未来を担う子どもたちに農業国であるフランスの風景を見せるという役割も持っている。それはテレビ越しだけではなく、トッププロは各地で子どもとふれあい、子どもたちも運営に参加する。第20ステージのモン・ヴァントゥーは地方の2000m近い山(都心の2000m近い山というほうが少ないわけだけれど)なのに10万人が観戦に訪れた。ランスが「こんなに観客がいるモン・ヴァントゥーは初めてだ」とTwitterでつぶやいていた。最終日はパリのシャンゼリゼを周回してゴールというのがここ30年の通例で、たくさんの人が観戦し、選手たちはシャンパーニュを飲みながらパレードする(順位などは前日までで確定し、最終日は争わないのが紳士協定となっている)。

国民的イベントで、世界がそれに熱狂するというのは、ちゃんとそれなりに理由がある。

技術と英才教育が必須の球技などとは異なり、自転車は持久力と瞬発力のスポーツだ。
(ペダルを回すとかフォームとかは、スポーツにおける「技術」ではない)
極論を言えば、誰よりもペダルを速く回すことができ、誰よりも長く続けることができれば勝てる。
(単純だからこそ容赦なく言い訳のきかない差が生まれる)
なので、何らスポーツをやってこなかったおっさんでも始めることができる。
(乗っていれば心肺も筋肉も鍛えられるのであたりまえの話なのだけれど)
今年、ようやく日本人がふたり完走した。
(誰もが予想以上の活躍をしたと思っている)
マラソンが得意とされている日本人に向いているスポーツのはず。
(観戦するためにチケットを購入しなくても沿道に行けばいいのも似ている)
ふつうにステージ優勝争いをしている時代が来ればいいなと思っている。
(でも駅伝のような日本独特のものも好きだったりする)
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コメント

はじめまして

はじめまして、岩手県浄法寺で漆の精製業をしている松沢と申します。
以前このブログをたまたま見つけて以来、拝見しています。

精製は個人で始めたばかりですが、国産漆だけの精製業は私だけではないかと思います。

該当の記事に対するコメントではないので恐縮です。でも“The Big Picture”は初めて見ましたが素晴らしいですね。見入ってしまいました。
テキスト量が膨大で、かつ内容が深いので、ログをじっくり時間をかけて読ませていただいております。

漆器に対する考え方はどれも共感するものばかりで、山中漆器に対して私が持っていたイメージが崩れました。
私が"山中"と十把一絡げにしていただけなのかもしれませんので、そういう意味でも認識を新たにした感じです。

売り込みになってしまうかもしれませんが、ぜひ浄法寺の漆を使ってみていただきたいです。
もしご興味がありましたら別途メールさせていただきます。

これからも拝読させていただきます。よろしくお願い致します。
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