Jon Balke, Amina Alaoui/SIWAN



【jazz, ECM2042】

多国籍ジャズ。っていうか、これもまたモダンジャズマニアからすればジャズではないと烙印を捺されるのでしょうね。ノルウェーのピアニスト、ヨン・バルケのリーダーアルバム。モロッコの歌手Amina Alaouiが作詞と作曲の一部を手伝った模様。他にメンバーはメンフィスのトランペッター、アルジェリアのヴァイオリニスト、古楽界のヴァイオリニスト、さらにHelge Norbakkenなるパーカッショニストに、Zarbというたぶんエジプトあたりの太鼓も加わり、おまけに古楽のヴァイオリニスト率いる12人編成の弦楽アンサンブルまで従えた、パート紹介だけでは何が何だかさっぱり判らないであろうアルバム。
 
最初の一音め、木管楽器なのか弦楽器なのかすらも判らない音色でノックアウト。これは4秒聴けば明らかに弦楽器なのだけれど、基音と倍音以外の音を排除した西洋の現代楽器(音がでかければいいという発展の仕方なわけで、音色とかそんなことは考慮されていないんです。なのである意味音色がペラペラ)からは聞こえてこない音(噪音。「さわり」の語源)まで含まれているから尺八めいた木管楽器を連想させるのだ、たぶん。西洋楽器とその他の楽器は違う。全然違う。EXELとEXILEくらい違う。というわけでメロディだけがアラブなのではなく音色もアラブなので超気持ちよい。だだっ広い宮殿の隅っこに置いてあるベッドだかカウチだかに寝転がって葡萄をつまみながら甘い酒を飲んでいるみたい。しかし私の想像力というのは毎度毎度貧困ですね。

アラブ音階と、無駄なビブラートなどない歌声が非常に心地よい。弦楽器はもちろんのこと、打楽器の音色も乾いた感じがしてすばらしい。まだスペインがイスラム圏だったころのイメージ。かといって土着的ではなく、とても洗練されている。それも悪い意味での(洗練という言葉がそもそも悪い意味だったんだけれど)洗練ではなく、結晶化したような感じ。というより、アラブだから土着的というのも短絡的な話である。アラブがどれだけ先進かは、カーペットを敷いた上にソファを置いてアイスを食べながらギターの音色を聴く、という一文で済む。これらはすべてアラブ発祥だ。世間のイメージとは裏腹に、アラブが理知的、キリストが野蛮。と決めつけるのも間違いである。というわけで、そんなことも踏まえた上でもこれが洗練されているのは、やはりECMのレコーディングとエンジニアリングの卓越さによるものだろう。徹底的にクリーンにしてあるわけではなく、じっくり聴いてみるとノイズも残っていて、それがまた気持ちよい。古楽アンサンブルとアラブ音楽を北欧ジャズピアニストが仕切る、ECMならではの一枚。今年リリースされたECMの中でだんとつのおすすめ。おすすめだけれど、試聴はしてください。

ぶっちゃけ打楽器と歌さえあればアラブ音楽になっちゃう(他の文化圏でも似たようなものだ)のに、そこに弦楽器が大挙して加わるのでスケール感の違いといったらもう。で、そうなると、弦楽器が鳴っていないときは空間を感じさせる。見事なものでうなってしまう。こういうのをお抱えのミュージシャンにBGMとして演奏させながら、天文学や数学にうつつをぬかしてみたい。

いろいろ書いたが、要はどんなのかというのは、下にリンクを貼ったHMVのレビューをお読みください。

ECM公式サイト:Jon Balke, Amina Alaoui/SIWAN
HMV:Jon Balke/SIWAN
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