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Les Withces/The English dancing master:No-body's Jigg 



【classic, early music】

全然見つからなかったALPHAレーベルの白ジャケットのひとつ。現在までの全カタログを別冊に加えて格安で再発。ザ・イングリッシュ・ダンシング・マスターというのは、1651年にイギリスのジョン・プレフォードがまとめたダンスのステップ集とのこと。そのステップと身振りのための楽譜もついていた。これ一冊あれば社交界だか卒業パーティだか七五三だかもばっちりだったのか、1728年の18版まで出続けた。そんな舞踊曲をフランスのグループ、Les Witchesが演奏、アルファのきらきらして厚みある音色で楽しめる。
ステップを踏む足音まで録音されていて無駄に臨場感たっぷり。曲の構成や展開も音色も素朴なんだけれど割とスピード感というかグルーヴ感(できるだけ私はこの言葉を使わないようにしている。このブログで使ったのは初めて。もう二度と使わない)がある。弦楽器に続いて笛みたいなのが始まるとさらにノリノリである。こんなので踊れるとはとても思えない。私の場合はステップ数を半分にしないといけないだろう。英国社交界かと思っていた先入観は見事に打ち砕かれ、ここでのダンスは五穀豊穣を祈るものだ。と思ったのだが、五穀豊穣を祈る舞いのステップ教本なんて需要があったのかとなると、日本でも「書かれたもの」として残すものではなかったので疑わしいし、やっぱり社交界なのだろう。でも太鼓の音が少なくないし時たま拍子木みたいな音もするので、やっぱり屋外を連想してしまう。なぜ太鼓だと屋外なのかは自分でも解らない。

フォークダンスと社交ダンスの違いについては明確で、ダンスのことは置いといて音楽のこともほとんど置いといて立場で見比べてみると、フォークダンスは音楽を演奏する人と踊る人が同じ人というか同じ身分である。社交ダンスは演奏する人は雇われの身分で、踊る人がご主人さまでありお客さまである(そこには契約関係がある)。食事を運ぶのはウェイター、音楽を奏でるのはミュージシャン。私はこのCDを聴いたときに、後者のような立場関係をイメージできなかった。良い例えが出てこなくて恐縮だが、何というかチンドン屋みたいなのを想像してしまったのだ。それもロンドンのような都市ではなく、草むらだか畑だかの土の上、曇り空の夕暮れ。

確か1650年ごろのイギリスは同君連合の時代で清教徒革命が終わったころのはずである。はずであるっていうか、こうしてブログで書くからには調べてるんだけど。で、清教徒革命が終わったということはイギリスにおいてルネサンスも終わったころだ。ルネサンスはあまり関係ないイギリスなので他の国と比べてみると、ルネサンスといえばデュファイやジョスカン・デ・プレなど百花繚乱。イタリアではマニエリスムが起こり、フランスでは私が大好きなアルス・スブティリオル(いずれブログで取り上げます)が芸術の極限まで達しようとしていたころだ。と、なぜこんなちらしの裏みたいなことを書いているのかというと、このCDの素朴な響きが、あまりにも当時の他国とバランスがとれていないからだ。もちろん1650年ごろのイギリスにはこれしか音楽がなかったわけではないし、これは世俗曲(貴族が聴こうが王様が聴こうが世俗曲である。世俗曲でないのは宗教曲だ)なのだから当然なのかもしれないが。しかし世俗曲にしてもマドリガーレなどとは進化の具合が随分異なる。というわけで、西洋史に詳しくない私には消化不良のままこの話はおしまい。こんな文を読まれたあなたは消化不良どころではないかもしれないし私としても申し訳なく思うが、どうしようもない。

何度も素朴と書いたので念のため付け加えておくと、素朴といっても美しい。
素朴さと美しさは相反するものではなく、x軸とy軸みたいなもの。

と、何度か聴いてみて上記のような感想を持って、だったら「イングリッシュ・ダンシング・マスター」がどんなものなのか調べれば一発じゃないかと気づ--それはあまりにも手遅れなのだけれど、気づいただけでも良しとして--英語版Wikipediaに“English dancing master”の項目があり、そこには“country dance”とあった。要はフォークダンスが起源の社交ダンスである。初版が1651年ということは、それまでに踊られてきたフォークダンスをまとめたものということだ。あたりまえだ。ああすっきりした。

でも、もしかしたら当時のイギリスでは、社交界においてフォークダンスを踊っていたかもしれない。チンドン屋が宮廷の大広間の隅でしとやかに演奏し、紳士淑女が手をとってダンスをしていたかもしれない。東インド会社が輸入した葉っぱを山にして、その周りを輪になって踊っていたかもしれない。のっちゃったら葉っぱの山に火をつけたかもしれない。とかどう考えても間違ったことを妄想し始めるとまたきりがなくなってどうせそのうち私の手には負えなくなるので余計なことを考えるのはやめる。これはいわゆるフォークダンス。おしまい。

それにしても別冊附録のアルファレーベルのカタログはずるい。こんなの見せられたらぜんぶほしくなる。でも私は冷静沈着さが売りの人間なので、ほしいものを38枚に絞り込んだ。はい、全然絞り込めてないです。日本では取り扱いが少ないので、期待せずに、なおかつまめにチェックして揃えていきたい。とはいうものの、思いが募りすぎてサイトで何度も試聴しまくったおかげで全部把握してしまっている。なので、ほんとうに必要なのかと問われたら、そうではないと答えるしかない。CDは眺めるものではなく聴くものだし。

1,200円のCD1枚でどんどん妄想が広がるんだから安上がりな人間である。

HMV:Les Withces/The English dancing master
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