サンタ・マリア・ノヴェッラのアルメニアペーパー



サンタ・マリア・ノヴェッラは、フィレンツェにある世界最古の薬局。サンタ・マリア・ノヴェッラ教会(当時は修道院)で薬草を処方していて、香水にも事業を拡大したわけです。メディチ家御用達になったり、さすがほんものという香りです。アルメニアペーパーは、以前だと日本でアルメニア紙と呼ばれていたもので、紙に香りがついているものです。香水売場にあるテスターだかサンプルだかの強化版という感じなわけです。
ヨーロッパの映画を観ていると、たまにサンタ・マリア・ノヴェッラが登場します。最近だと「007 カジノ・ロワイヤル」にも登場していました。香水はどこの何を使っているかで登場人物の役柄やキャラをイメージしやすくしているわけですね。ヨーロッパの映画は奥深いというか細部にまで手を抜きません。で、カジノ・ロワイヤルでヒロインが愛用していたメログラーノ、もともと紳士用の香りでした。ヒロインは大学を出て財務省に入り、黒いスーツを着ています。キャリア意識たっぷりというわけです。なのでユニセックスな香りのメログラーノがぴったりはまるんです。

他にも「羊たちの沈黙」と「ハンニバル」の主役ハンニバル・レクター博士は、後に彼が調教を完了する敏腕FBI捜査官クラリスに、サンタ・マリア・ノヴェッラの香りをつけた手紙を送ります。そういうものを知っている人間が犯人だということで、ただの猟奇的な人物でもないし、自分の境遇が不満で犯行に及んだわけでもないということが判るわけです。また「ハンニバル」では、ハンニバル・レクター博士がサンタ・マリア・ノヴェッラの店舗を訪ねている姿が防犯カメラに収まっていて、彼がイタリアにいることが判ってしまう、というのもありました。こういう作り込み方や説明描写は大好きです。日本の映画だと……うーん。

私はアルメニアペーパーをクルマの中とクローゼットと書棚に置いてあります。私のクルマは、山へ行った帰りに着替えもせずに乗り込まれ、温泉まで小一時間過ごされたりしてかわいそうな目に遭っています。自分でも汗くさいと判るのだから相当汗くさいはず。そんなことを繰り返しているうちに匂いってやつは粒子なわけで染みついていきます。自転車を乗せて遠くでツーリングしたり、畑に行ったり漆器(の制作途中のもの)を運んだり、放っておくとかなりワイルドな匂いになります。なので消臭剤とアルメニアペーパー。クローゼットは開け放していて、書籍やレコードもあるその小さな部屋全体が香りに包まれます。とはいっても強烈な「匂い」ではなく、そこはサンタ・マリア・ノヴェッラ、ちょうど良い感じです。寝る前に読む本の栞にしてみたりもします。何といっても細長い紙なのですから。



あまり知られていない使い方としては、財布の中に1枚入れておくのがおすすめ。財布を取り出して開けるというのはパブリックな場所での割とプライベートな行為というか、うまく説明できないのですが、財布を開けるシチュエーションにおいては香水があっても悪くない感じになるような気がしないでもないからです。でも会計をテーブルでするようなレストランへ行ったら、他のお客の食事がまだ途中であれば、香りは邪魔になるので避けた方が良いでしょう。しかしながら、花をゴージャスに生けてあるような香りに無頓癪なお店だったら私は構わず開けています。

名刺入れに入れておくというのも相当キザですが、やっている人がいちばん多いのはこれです。

香りの持続は置く空間によっても異なり、クルマだと1か月、クローゼットなら3か月は余裕で持ちます。鼻を刺激するような強烈な匂いではないにも拘わらず、これだけ持続するというのはほんとうにすばらしいことです。毎日ミストタイプの芳香剤を吹くことを考えれば、アルメニアペーパーのほうがコストパフォーマンスが高いということにもなりそうですし。

日本では青山にショップがあり、何度か訪れたことがあります。最近では京都などにも出店していて、経営している企業が違うみたいです。なんだか複雑そうです。新しいほうがサイトも見やすくて評判がいいみたいです。でも私は青山店の、サイトまで無愛想な感じが好きです。香水はパーソナルなもの、相性がある、そして何よりも「香り」が商品。通販できないものだと明確に打ち出している姿勢にも非常に強く共感します(以前はFAX注文用紙がサイトからダウンロードできましたが、それもなくなりました。すばらしい)。なので私はネットで購入せず、青山店へ自分で出向くか、友人知人が遊びに来るときに買ってきてもらうかしています。不便さだってストーリーのひとつになり得ます。



実は私、過去にサンタ・マリア・ノヴェッラ教会へ行ったことがあります。メインの目的は近くにあるウフィツィ美術館でして、若造な当時の私はサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局のことなど知らなかったのです。なので何も購入しなかったというか本店へ足を踏み入れもしませんでした。いま考えると非常に惜しいことをしました。イタリアの教会といえばギザッロ教会へ自転車で行きたいと思っていますので、ついでにフィレンツェにも寄ってみたいと思っています。でも一体いつになるやら。

Profumo Farmaceutica di Santa Maria Novella本国サイト
私が利用している青山店のサイト
多店舗展開しているヤマノアンドアソシエイツのサイト
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