SORELのブーツ BADGERとグレイシャー



雪はいやだなあ、寒いなあ、とか思ったところでそれはニンゲンの都合。
寒いならば寒さ対策をすればいいって話。
 

長い東京暮らしから加賀へ戻ってきて、まず最初に「どうにかしなければならない」と思ったのは、防寒でした。記憶の中では学ランの上に何も着ず登下校していたはずなのですが、それはそれ、若さゆえのあれです。のび太が冬でも短パンなのと一緒。大人になってからも同じように薄着で元気なわけなどありません。でもまあ実際に過ごしてみないとどれくらいか分かんないよね、ってことで、しばらくは何も買い足さなかった。初年度は気合いが入るって言うし。

そんで暮らしているうちに東京の遊び方から田舎の遊び方に移行するにつれ、外の割合が増えてきた。あたりまえだね。でもそうでない人もいるかもね。でもそれはたぶん都会とか田舎とか関係ないアクティビティだね。それはともかく、真冬に外で飯を食うのは超絶的に美味しくて気持ちがいい。1月末、海辺でバーベキューや燻製をひとりで楽しんでたら、余りにも私が楽しそうだったらしく、夜に急遽ふたり参加してバーベキューが始まったことだってある。参加したふたりは寒そうで、そりゃそうだよなと思いながら、私ひとりでぬくぬくしていた。

この差は何か。
ふたりは生まれてからずっと加賀で暮らしてきたはずなのに。

ソレルは、カナダの靴メーカー。モデルも履いてるカリブーってモデルが代表的。あれですら東京だとオーバースペック気味なんじゃないかな、だって氷点下32度でも大丈夫なんだし。でも機能の問題ではなく着こなしの問題なのかもね。モデルのオフショットでもソレルが頻出するし。たとえばこんな感じ。というわけで、数多あるアウトドア「ファッション」(エーグルとかエディバウアーとかL.L.ビーンとかの総合商社系、あとはコールマンとか日本だとモンベルとか、いろいろ出してるところ)と、そういうのとは違うちゃんとしたアウトドア「メーカー」と、欧米のいわゆる長靴メーカーをあれこれ調べ、比較検討した上で、私は私の生活にはソレルが最適と判断した。そこに異論をもってこられても困る。それは私の生活なのだ。

アウトドア「ファッション」は、寒さや雪や水への対策がなされていない。あたりまえなのだけれど、見た目だけだ。悦に入る感じ。秋、釣りをしてから焚き火する。L.L.ビーンのブーツを履いて、ペンドルトンのシャツの上からフィルソンのマッキーノを着て、低い椅子に座る。横には犬がいる。完璧。それはそれで様式美なのだけれど、私は雪の中で生活するためのアイテムがほしいのであって、そんな「安全な場所でのコスプレ」なぞする気は全くなかった。雪が積もったら履けないブーツなんて、無意味。

登山メーカーの靴はオーバースペック。
あんなの履いて街を歩けない。
靴底が曲がらないですからね。

長靴は、割とおしゃれなものを作っているところがいくつかある。そう、それは長靴ではなく「レインブーツ」なのだ。でも残念ながら、それが「かわいい」になるのは女の子なのだ。かわいいは正義である。ということは、かわいくなければ悪である。というより、私はかわいくなりたいわけではないのだ。しかも私が履くと、ホームセンターで売っている長靴と大差ない。パンツをブーツインなんてこともしない。大抵の男は長靴をおしゃれに履きこなすことが不可能である。おしゃれに思えるのはその長靴をどこで買ったかという気分の問題でもあり、傍目で見れば大差ないとも言える。なので、スペックや性能に違いがあれば考えたのだけれど、長靴全体で見た場合、ホームセンターで売っている内側に分厚いボアのついてるやつが高性能なのは明らかだったので、やめた。真冬の工事現場や警備で、おしゃれな長靴を履いている人など見たこともない。なんといっても、それは「レインブーツ」なのであって、決して「スノーブーツ」ではないのです。そういうお洒落優先は、淑女なロンドンっ子や小粋なパリっ子にまかせておけばいい。どういうブランドがあるのかは、こういった専門サイトを観てみれば判ると思います。

単に「防水」ってだけなら、ただの長靴でいいです。絶対に水を通しません。型に流し込んで固めたゴムだから。じゃあなぜ足が冷たくなるのかというと、ビニールのカッパを着たら防水にはなるけれど寒いってのと一緒で、蒸れて冷えるんです。自分のせいです。そして、体を覆っているものと直に触れて熱を奪われるんです。間にウールのセーターがあるのとないのとじゃ大違いです。防寒は、空気の層を設けることが肝心。防水とは別の話。たとえば、全裸にビニールのカッパを着て雪の上に寝転がってみてください。雪は防げますが、凍死します。ゴアテックスが今でも最強なのは、防寒ではなく防水と透湿が最強なのであって、あったかくするのはその下に着るウールやフリースの役目です。

ちなみにレッドウイングやティンバーランドといった「ワークブーツ」は、その名の通りワークブーツに過ぎません。ガレージでクルマやバイクをいじったり、日曜大工のときに履くもの。釘を踏んでも大丈夫、金槌を落としても大丈夫、ってものです。時折、ああいうので登山できますかと質問を受けることがあって、そんなのその人のスキル次第だよ、昔の人は足袋だよ、と私は話を聞きながら頭では思ってるのだけれど、そう聞いてくるってことはスキルがないってことで、絶対にやめとけと答えています。ワークブーツやエンジニアブーツで登るなら、スニーカーで登る方が安全だし疲れないし、靴がボロボロになっても心と財布が痛みません。トレッキングシューズなぞ1万円もしないのだから買えばいいのに、なぜか「ふだんも履けるから、どうせなら3万円くらいのエンジニアブーツを」とかいう思考回路になる人が、たまにいます。

あとは、そんなカテゴリがあるのかないのか分からないのだけれど、スノーブーツを軽く調べてみた。しかしそこは、私が履きたい、ほしい、と思えるものが全くない不毛の世界だった。もし仮に防寒性能が最強なら考えたかもしれないけれど、性能もあまりよろしくない感じだった。どれだけ探しても私が履きたいと思えるようなものに出会えることはなさそうなので、とっとと引き返してきた。

ムートンのブーツは、あったかいけれど防水性能がだめ。
あれは太平洋側で履くもんです。

そんなこんなで、寒さ厳しいカナダのソレルがいいのかな、そりゃまあそうだよねっていう結論に至った。耐久性もあるみたいで、十何年履いてるとかいう話がぽんぽん出てくる。性能別にふたつあればシーン別で履き分けるだろうし、あと何年で死ぬかわかんないけどふたつでいいかな、ふたつで充分ですよ、デッカードさん、ということでブレードランナーを観たことない方には何のことだかさっぱり解らないとは思いますが説明せずに話を進めると、ソレルを調べ始めたら、何とびっくりカナダ製が徐々になくなり中国生産に切り替わりつつある時期だった。あぶない。寒さと雪から守るためのものが中国製だなんて、いくらソレルとはいえやっぱりあれだよね。ゴムの品質もあるし。

※残念ながら現在は中国製ばかりになっちゃいました。



で、どのモデルにしようかと検討した。ふたつで充分と自分で自分に規制をかけたのだから自分のせいなんだけれど、そこそこ悩んだ。男性モデルは事実上カリブーと1964なんとかかんとかしかない状況。カリブーは上が革で、1964なにがしは上がナイロン。どっちもありふれていていやだ。どうしよう、ベタにカリブーにするか、黒だよなあ、黒がいい(茶色は致命的に似合わない)、でもカリブーの黒には白いラインが入ってるんだよなあ、とか思っていたとき、ふと思い立ってレディスを見てみた。あった。レディスなのに28cmまである。ありがとう大柄な北米女性。あなたたちのおかげで身長182cmで足のサイズが26cmまたは26.5cmの私でもレディスを履ける。レディスを着るのはトリコCDGの巻きスカート以来だよ、というわけでめでたく私はふだん履きのものをレディスから「BADGER」ってのを選び、もうひとつは「いちばんいいやつ」を選んだ。



レディスモデルは甲が狭く低い。女性の足を入れるものだからそうなのだろう。私は男性平均からしても甲が高い。アーチが尋常ではないのだ。猿みたいなもんだね。なのでひとつサイズを上げて27cm(ソレルのレディスサイズでは11)を履いてみたらぴったりだった。見た目も「ヘビーデューティ」(←いまひとつ意味がよく解らない言葉で、でも何となく私の嗜好でないことだけは判る)ではなく、田舎だったらちょっとしたリストランテでもだいじょうぶな雰囲気である。そこそこかわいくて、そこそこハード。で、アウトドア「ファッションブランド」の靴とは醸す雰囲気からして違う。上半分は革で、黒。文句ない。スペックはカリブーと同じく氷点下32度までオッケー。ソールもギザギザではなくツブツブ。革の部分は普通に革靴のメンテナンスと同じ。

ちなみにソレルのサイズは、ふつうです。小さいとか大きいとかはありません。ふだん履いている靴の平均でオッケーです。で、それに0.5か1を足せばいいです。「ぴったりフィット」させて履くものではないし、つま先に余裕があったほうがいいです。それはなぜかっていうと話が長くなるので省きます。念のため補足しとくと、冬は厚手の靴下を履くから靴はワンサイズ大きめを、という理由ではないです。薄手の靴下でも、ゆとりがあるほうがいいです。で、足首から上を紐で合わせればいいんです。



いちばんいいやつっていうのは、グレイシャーってモデル。価格は安い。なので「いちばん高いやつ」ではない。これはほんとに驚異の防寒性能、カナダが誇る最強ブーツ、ソレルの中でも最強、何とびっくり氷点下73.3度まで大丈夫なのだ。なんでそんな中途半端な数値なのかっていうと、そこまで厳密に計測したわけではないし氷点下73.4度になったらいきなり凍傷になるのかというとそういうわけでもなくて、単に「華氏マイナス100度」なのだ。それはともかく、もうこれなら日本のどこでも何があってもいけるはずだ。足だけはね。上の画像でお解りの通り、同じサイズでこれだけ大きさが異なるし1200gと重いので、美しい脚線美を誇る美女のあなたにはおすすめできない。あなたの脚がカモシカから大根に移ろいゆくのは見たくない。歩くのがつらいと思うかもしれない。でもこれはもうほんと安心する。どれくらい暖かいかというと、クルマを運転しているときに履いてると暑いので、裸足で運転しちゃうくらいなのだ。そんなわけでもちろん、走ると暑い。蒸れてるわけじゃなく、単純に暑い。ツブツブで、ほとんど減っていない。これはどういうことかというと、アスファルトの上を歩かないから。雪の上を歩いてるだけじゃ、10年くらい減らずにこのまま履けそうです。



ソレルのブーツはインナーを取り外すことができ、インナーだけを洗うことができる。消耗品ってことで、インナー単体でも売ってる。ホームセンターでいちばん高価な長靴を買えちゃうくらいの価格なんだけどね。グレイシャーはインナーが重厚で、何層にもなっている。外側から、ウール、アルミ、ウレタン、フェルト。これだけで服を四枚着てるようなもんだ。そりゃ暑いよ。ソールの部分も分厚い。で、フェルトとウレタンが汗を吸ってくれるので、蒸れて冷えるってこともない。



こんなの北陸でもオーバースペックだろとあなたは思うかもしれない。確かに北陸は北極圏ではない。でも、安心は何物にも代えられない。私は、雪の積もった畑で白菜を採っています。長靴じゃ駄目です。パフォーマンスが落ちます。雪かきだってするし近所の山へ散歩に行きます。流星群だって観ます。アウトドア「ファッション」のブーツよりも単なる長靴のほうがあったかいってことも経験済みです。その上で、ソレルは最も快適だと断言できます。何よりも、ソレルのブーツは最高性能であるがゆえに、外でのアクティビティが楽しくなります。焚き火台を使って焚き火すると、足元が暖かくないです。焚き火のときこそ、靴はしっかりとしたものを選ぶが吉です。上なんて真冬でもウールのセーター着てれば良い感じです。

夜明け前、ソレルのブーツを履く。
上も下も次回紹介するやつ(更新しました)を着る。
ゴアテックスのジャケットを着て、ウールの帽子をかぶる。
もちろん手袋もする。
雪の上をざくざく歩く。
空が黒から群青色に変わってくる。

とても気持ちいいですよ。

ソレルは、廉価なところもすばらしいです。
定番のカリブーは定価19,950円。
レディスだとアウトドア向けの真っ白なスノーライオンってモデルなんて定価11,025円。
街でも全く違和感のない見た目のミラノブリーブが定価21,000円。
「ブランド」だけのブーツよりも安いんじゃないかってくらいです。

ソレル公式サイト
ソレル本国公式サイト
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