ブックマークする、漆塗りと印傳の革紐でできた栞



One year has passed since that day exactly.

今日もまだ、34万人の人が避難所生活を送っています。

※完売致しました。


自分にできることは何か。
それは、そのときによって変わってきます。
私は、この1年、できることをしてきたか。
それを今日は、自問自答します。

私は漆器を作っています。日本産の漆で最も安定して高品質なものを供給してくれているのは、どこか。茨城県の大子です。「職人や作家によって良い漆ってのはそれぞれ」とかいった、日本で最も大量の漆を供給している某産地のエクスキューズを鵜呑みにしてはいけません。はっきりと、数値に表れています。圧倒的なシェアの某産地で採られる漆は、成分が中国の漆と似ているのです。じゃあ中国産でいいじゃん、という話になっちゃいますよね。

何が優れているか、というのは難しい問題です。見方を変えて、数値を比較してみれば良いのです。大子の漆は、水分が20.1%で、ウルシオールが72.3%で、窒素が1.5%です。対する国内某巨大産地の漆は、水分が25.1%で、ウルシオールが67.3%です。そして、重要なのは中国の漆。水分が27.5%で、ウルシオールが65.0%で、窒素が2.2%です。この事実は、何を表しているか、ってことです。

「日本産の漆が良い」と謳うなら、中国産の成分率と離れれば離れるほど「良い」のは明らかです。「質も日本一」と言ったり「何が良いかは人によって違う」と言ったりする某巨大生産地の言うことなど、自己正当化の営業トークに過ぎないのです。過ぎないというか、過ぎないどころか明らかな公正取引法違反で、大子の漆を選んで使った漆器に対する営業妨害です。ほんとうは質が高い大子の漆を使っていても、低質と思われてしまう事態にまでなりつつあります。繰り返しますが、そもそも「質が日本一」というのは公正取引法違反です。さらにその某産地は、さまざまな優良誤認をあの手この手で繰り出しています。

大量生産できないから、巨大な歴史的建造物の改修に使われることもない。百貨店やショップで目にすることも滅多にない。でもほんとうは大子の漆が良いってことは、漆器づくりに携わる中で、ある一定のラインよりも上の人なら、今さらそんなこと言うまでもない判りきったことなのです。

というわけで私は、夏を過ぎたころ、茨城県大子の漆を維持するために、微力ながら自分も何かを、と思うようになっていました。茨城県だって被災地なのです。震災特需でむしろ売り上げが大ジャンプしてうはうはな東北の某巨大産地ばかりがクローズアップされる中、大子は何ら手を差し伸べられることなく、相変わらず細々と漆を採って精製しています。

大子漆こそが「日本一の質」で、大子も被災地、というのを知ったところで、じゃあ大子漆の人に寄附しよう、となることが難しいことくらい、私でも判ります。そんなことは、ありとあらゆる業種で起きていることなのですし。で、何かを購入していただき、その送料ぶん以外は寄附する、ということにしました。送料が安くて、つまり小さくて薄くて、もの自体も廉価に設定して。ああいうことが2011年3月11日にあったことを刻むもの。

そんでまあ、漆を塗る必要のないものには塗らなくていいと常日頃から思っている私には、なかなかナイスなアイテムが思いつかず、やっぱこれかなということになりました。本の栞、ブックマークです。素材は麻です。麻に黒色の漆を染み込ませ、アラビア数字で「311」と書くのはえげつないので「∴ ・ ・」とドット(というには大きい)を同じ黒漆で入れ、甲府印傳に使われる革で紐をつけたもの、です。



ブックマーク。

消費税と送料ともに込みで、500円です。そのうち、400円を大子町に寄附します。ぶっちゃけ、売れれば売れるほど赤字です(なので限定です、お恥ずかしい話です)。チャリティってのはそういうもんだと思っています。事務局みたいなのが何ら身銭を切らないようなのばかりで、ほんとうにうんざりしているんです。それでなくても、収支構造がディスクローズされていないチャリティグッズばかりで、それなら直接お金を被災地に寄附したほうが、被災地に届く金額が多いだろ、ってケースがほとんど。

限定34個です。
追加はありません。

本日より、メールにて注文を承ります。
代金の支払いは、ゆうちょ銀行もしくは地方銀行の口座へ振り込みです。
ゆうちょ→ゆうちょ、以外で発生する手数料が馬鹿みたいですので、
なるべくゆうちょからゆうちょが良いかなと思っています。
発送は、定形郵便です。

メールはcotaniguchi@gmail.comまでお願い致します。
ご注文のメールにて、お名前とお届け先のみお伝え頂ければオッケーです。
折り返し、振込先をお伝え致します。

自分は全く出費せず、自分が何か「善行」をするために、人の善意を利用して、人からお金を集める、というのは私が最も嫌悪するやり口です。今日は全国でイベントが開催されます。そのお金の流れはどうなっているのか、よく考えてみる必要があります。そして、何かのイベントに出向くということは、基本いまの日本はクルマ社会なのですから、口酸っぱく節電と言っていたムードも今は昔、排気ガスを撒き散らしながら「善行」に参加する「考え足らずな人」がたくさんいるでしょう。

また、私は、どんなに私よりも社会的地位が高くても、年上でも、立派な人だと世間では思われている人でも、その人が「被災地へボランティアに行く。だから活動資金をくれ」っていう意味のことを手を替え品を替え言ってたりしたら「自分の金で行け」と言っています。そういう心底インチキな、お金を「集める」のが得意な輩どもよりは、予め新聞記者を呼んでおいて、まとまった金額を寄附するところを新聞記事にしてもらったりしている俗物のほうが、まだ遙かにまともだと思います。

この栞は、麻に漆を染み込ませたものを私が購入し、山中漆器の職人である山谷尚敏氏からドットを入れるための黒漆を提供いただき、甲府印傳の「印傳の山本」の山本裕輔様から革紐を提供いただき、できあがったものです。漆は中国産という、なんだか変な話ではありますが、お許しください。ただ、チャリティグッズだからといって手抜きを自分に許していたら、要はゴミみたいなものを作ってしまうわけで、そんなのは世間にたくさんあるので今さら新たに作る必要などないです。おかしな癒し系だかポジティブだか自己啓発系だかのメッセージや、アラビア数字で日付が入っているようなのは、私自身が使いたくないです。なので、遠目で見たら真っ黒な栞です。でも、漆と印傳です。日本の工芸技術でできています。

500円が安いと思えるようなものを。
ほんものの素材で。
それがベストです。

もちろん、通常の漆器としては欠陥のある「塗り」になっているものばかりですが、栞としての使用に支障を来すわけではないので、そのまんまにしてあります。また、ドットの位置や大きさなども全部バラバラです。漆を固めるときに置いておいたダンボール箱がくっついているのもあります。ご了承ください。

甲州印傳の山本祐輔様にはほんとうに御尽力いただき、深く御礼申し上げたいです。こちらから麻の栞本体をお送りし、そこに結ぶ紐ということで、丁度良い感じにカットしていただき、送っていただきました。材料代、手間賃、やりとりした送料、すべて山本様の負担です。それで印傳を作れば収入となるのに。というわけで、山本様も大赤字です。ドットを入れる黒漆は、近所に住んでいるので、お伺いして主旨を説明し、ちょっぴり分けてもらった、という次第です。

「∴ ・ ・」のドットは「よって、ひとりとひとり=ふたり」とかそんな変な意味など込めていません。そういうのは、いんちきくさいチャリティビジネスの人たちにおまかせしたいと思います。

大事なことなので2回書きます。
今日もまだ、34万人の人が避難所生活を送っています。




追記;
このブログ記事をアップしてから、ツイッターとフェイスブックにリンクを貼りました。おかげさまで2時間ちょっとで完売致しました。注文頂いた全ての方と、印傳の山本様、塗師の山谷様には、心より御礼申し上げます。追加も考えたのですが、印傳の山本様にもご迷惑がかかるし、売れば売るほど赤字になるので、若干の追加分(ドットの入っていないもの:関わった人たちにお配りしようと思っていた分。それも既に売り切れ)を含め、完売とさせていただきます。ご了承くださいませ。来年また何か作るかもしれませんし、作らないかもしれません。
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