丹後藤布/丹後藤織り



万葉集の中でも歌われている、藤布。
縄文時代から衣服に使われていた、最古の布です。
成長が早く、ばんばん使っても何ら後ろめたいことはありません。

今回は、少し前に丹後を訪れたときのおはなし。
お相手いただいたのは、芙留庵の加畑さん。

植物から糸を作る。その方法はたくさんあります。棉を紡いだ綿は、だいたい想像できると思います。麻も、だいたい想像通りだと思います。でも世の中には、植物から作られた糸がたくさんあります。それらは、どのようにして糸になっているのか。そういうところに私は強く興味を惹かれます。棕櫚箒をブログで取り上げたときも、立派な棕櫚の木が箒となるまでの、その途方もない工程の一端でもお伝えできたかなとは思っています。今回ご紹介する丹後藤布は、その名の通り、藤から糸を作って紡いで撚って織ります。やっぱり、途方もない工程でした。

では、藤布の出来るまで。

春、藤の蔓を伐ります。
水分が多いので伐りやすいからです。
伐ったら木槌で叩いて皮を剥ぎます。
そのまま続けて中皮を剥ぎ取ります。
使うのは、中皮(アラソ)です。
しばらく乾燥させます。
水に浸します。
灰にまぶします。
木の灰と石灰を混ぜた灰汁で煮込みます。
煮込むことで繊維だけが残ります。
煮たら川でこすり洗いします。
(残った灰汁は陶器の釉薬に使われます)
米糠をお湯に溶いたものに浸します。
絞って叩きます。
(空気を含む滑らかな繊維構造に変えます)
それを干します。
それをさばいて糠や毛羽を落とします。
それを割きます。
どんどん細く割きます。
もう割けないってくらいになったら、撚ります。
これを藤績(うみ)といいます。
結び目のない、とても長い糸ができあがります。
それをお湯に浸して柔らかくします。
それをさらに撚って強度を増します。
糸のできあがり。
そんで、草木で染めたりします。
そんなこんなで年が開け、織りはじめます。



以上の工程を用語にすると、藤伐り、藤剥ぎ、灰まぶし、灰汁炊き、藤こき、のしいれ、藤績み、よりかけ、わくどり、へばた、はたあげ、機織り、となります。各工程の画像は、もちろんありません。そういうのはGoogleでお探しください。とんでもない重労働で、手間がかかり、技術も必要。他の繊維が糸になるまでと比べれば、綿などのほうが遥かに楽で、そりゃまあ衰退していきます。全国で作られていた藤布は、江戸時代に廃れました。でも丹後の山奥(網野町上世屋)では連綿と作られていることが1962年に判明、1989年に丹後藤織り保存会が発足、2010年には国の重要有形文化財に指定されました。



縄文時代から衣類や袋に利用されてきたそうですが、一方で中世の庶民はそんな服など着ていないことも中世文学を読めば判りますし他の史料を観てもそうです。かといって中世には稀少な高級品となっていたのかというとそういうわけでもなく、丹後だけでみても丹後縮緬がありますし、全国には絹織物がたくさんありました。何が貴重かは時代で変わるものですが、たとえば能登上布などは昔も今も普段着なわけで、そこはやっぱりそうなんじゃないかなと思ったりもします。



帯を一本作るには、長さ150cmくらいの蔓がどれくらい必要か。100本です。それだけの量を、上記のような工程で糸にしていくのです。途方もない作業だということがお解りいただけるでしょうか。しかも、全ての工程が手作業です。一度は自動の撚り機を試したそうですが、手作業が効率的だと判断して機械化は却下となったそうです。すさまじい情熱ですよね。ふつうは、そういう事態になったら撚れる機械の開発をするもんです。そうしないところがすばらしいし立派です。



使えば使うほどしなやかに柔らかさを増し、艶も増してくる、藤布。
単に蔓を割いて織るだけでは、そんな特長はなかったでしょう。
古代の人たちは、身近にある植物を一通り試したはずです。
木を彫って作った食器に何を塗ればベストか、
というときに漆を選んだように。
一通りの植物を試した後に藤が良いとなったのでしょうが、
それでこの工程の数です。
どれだけの試行錯誤があったのか、想像を絶します。



つる植物は細長くて柔らかくて引っぱり強度が高い。
そのため、紐や綱などにも使われます。
かずら橋は、蔓だけで作られます。用いられるのは、葛です。
いかにも丈夫な繊維ができそうですよね。

世界最大のテキスタイル見本市、パリのプルミエール ヴィジョンに出展されているそうです。
どのような評価だったのか、気にならないといえば嘘になります。



仕事場を拝見した後、軽く山を歩き、大きな木を眺め、少しドライブして元伊勢奥宮真名井神社詣り。



楽しい旅でしたよ。

藤には右巻きと左巻きがあります。正確にはS巻きとZ巻きです。

加畑さんは藤布の他にもいろんな織物を作っていて、与那国蚕で絹織物を作っています。
下の画像で最後のほうです。

























京都府ホームページ:丹後藤布
京丹後市観光協会:藤布の継承を目指して
宮津市:丹後藤織り伝承交流館
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