Be-PAL 2012年10月号



「Be-PAL」10月号別冊付録「大人の逸品」は、小学館が発行する雑誌の通販ページをまとめて別冊にしたような感じ。そこに「和の新スタンダードBest7」というページがあり、欅ひとりぶんが4位として掲載いただきました。もちろんそこからご購入できます。ネットショップでも購入可能です。

今でこそ漆器で入れ子のお椀というのは珍しくなりません。でも、かつてはハレの場で用いる高級品でした。ふだん使いできる、一食ぶんの食事をまかなえる入れ子のお椀。父が生み出し、グッドデザイン賞を1993年に受賞。しかし数年間まったく売れなかったそうです。


漆器の世界というのは誠に分りやすい世界で、卸や小売は「売れるものを取り扱う」のです。もっと言うと「売れているものを自分とこでも売りたい、売れるから」というわけです。なので、入れ子になったセットなど、どの卸や小売りも扱おうとしなかったようです。そして数年経ち、小学館プロダクションからオファーが来て、雑誌「サライ」の通販ページで取り扱うこととなったのです。そして結果は、売れました。父は小学館プロダクションに恩義を感じ、売れると判ったら取り扱いたくなる卸や小売からの引き合いは全て断るようになりました。私が帰郷し、現在は閉じてしまいましたがサイトを開設したときも、欅ひとりぶんだけは「お買い求めはこちら」と小学館の通販サイトへリンクを貼っていました。

そんなこんなで「サライ」で取り扱っていただくようになってから14年。2012から14を引けば、1993年にグッドデザイン賞を受賞してからどれだけの期間に亘って取り扱いがなかったか、お判りになると思います。14年経っても、こうして雑誌通販で取り上げていただいているのは奇跡に近いことです。通販の世界も、常に新商品を求めていますからね。どんな販売チャネルだってそうです。そのメーカーの作るラインナップが代わり映えしなかったら、取り扱おうとは思いません。なので漆器の世界でも新しい「デザイン」が毎年毎年山のように出ます。しかし、全てのプロダクトがそうだとは限りません。デザインそのものが消費されるようになったら、商品寿命は短くなっていきます。





「サライ」で取り扱っていただく間に、欅ひとりぶんはロングライフデザイン賞を受賞しました。これは、グッドデザイン賞を受賞したものの中で、10年以上現役商品として売られている、売れているということが明確に提示できるもの、というのが前提です。私が手がける漆器は、爆発的なヒットにはなりません。だって一度にそんなたくさん作れないですから。輪島には汁椀だけで年間5000客以上売る有名な人がいます。その方の仕事場にお邪魔したことがあり、ああ、そりゃたくさん作れるわ、と感じました。あのような作り方は、私には無理です。たくさん売りたいのと、良いものを作りたいのとでは、違います。全然違います。微分積分とセブンイレブンくらい違います。

欅ひとりぶんには、茶托があります。食後にお茶を飲む人が減りつつあり、茶托を使う人はさらに少ない。茶托は不要、という声をいただくようになってきたのは3年ほど前。それを、単に茶托を使わない人が増えてきたと結論づけるのは早計で、別の見方をすれば「茶托を使わない生活様式の人が漆器に興味を持つようになってきた」とも言えるわけです。私は後者の広がりを実感していたので「食事の後はお茶、湯のみは茶托に乗せて」というのを強制するつもりもありません。なので、茶托を省いたバージョンもラインナップに加えました。ついでに、塗りも昔ながらの拭漆ではなく、黒摺りにして。

そのバージョンは、こちらでご購入いただけます。

ご購入されたひとりひとりの方に感謝いたします。
これからも作り続けます。

といった思い出話まじりの長話はこのへんで。Be-PALの10月号には、もうひとつ別冊付録がついていて、これがとんでもなくおもしろかった。横井庄一の「サバイバル極意書」だ。見出しのタイトルだけでどれだけおもしろいか伝わると思うので、いくつか。「火は宝物だで。竹をこすり合わせて、初めて火がおきた時は、道で100万円拾ったような気持ちになったよ。」「ウナギやエビや豚も食べたが、一番のたんぱく源は、野ネズミと毒ガマガエルだった。」「セックス?28年間忘れていたよ。」「15歳で豊橋の洋服店に奉公に出たんだ。それがジャングルで役立つとは思わなかったよ。」「木を切り、服ができるまでに半年かかった」などなど。名著「冒険手帳」(現在は「新冒険手帳」として復刊)のような実用性は皆無。どのように横井庄一がサバイブしたかが微細に綴られている。



というふたつの別冊付録がついていて、おまけにお買い物もできちゃうのだし、本誌はキャンプ関連の情報とノウハウが充実。お得な10月号です。


「サライ」を中心に小学館の雑誌で取り扱っていただいていたのですがブログで取り上げなかったのは、雑誌の通販ページで取り扱っていただくことと、メディアに掲載いただくことは、意味合いが少々異なるからです。でも良い機会なので今回は書きました。


Wikipedia日本版:横井庄一
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