天然生活 2013年4月号



登山地図や何だかんだでいろいろ購入している山と渓谷社から独立した出版社、地球丸。その名前に覚えはなくても、雑誌「天然生活」はご存知の方も多いでしょう。4月号の特集は「いとおしい食器棚」ということで、ナチュラル系のライフスタイル誌でおなじみの方々が、食器棚と、その中に収まっている食器を披露しています。他人様の書棚の中身を見るのが好きな私、もちろん食器棚を見るのも好きです。それどころか棚そのものまで興味の対象です。

で、応量器を「掌(たなごころ)の食器棚」として紹介いただきました。どっちかというと私は天然生活というより「野生生活」あるいは「丹念生活」なんですけどね。それはともかく、これまでメディアに掲載いただいた中では最も多い、5ページです。文章も写真も豊富です。そりゃまあ5ページあるのですからね。というわけで、応量器をお持ちの方も、ご興味のある方も、応量器って何という方も、ぜひ御高覧くださいね。
 


応量器については、こちらのページでご紹介しております。

イベントに出展しない、宣伝しない、新規開拓しない、公募展に応募しない、つまり名前の出るようなことを何もしなくなった私を見つけてくれるのは、とてもうれしい。しかもそれが「デザインコンシャスな工芸」とか「新しいクラフト」といったありがちなものではないというのも、さらにうれしくありがたい。話は逸れますが、数年前から世の中はデザイン過剰です。工芸の世界も。デザイナーやプロデューサーの食い物にされているだけなのですが、何かそういうキャッチーなことをすると補助金をもらえるので、補助金をあてにしている作り手のふりした商売人は、もうその流れに乗ってしまったら乗り続けるしかないのです。そして貧乏ながらも捻出した地方の補助金は、東京の有名デザイナーや敏腕プロデューサーの懐に入るという次第。

取材にお越しになられたのは、雪が積もった日でした。私の住まいは日当りが悪く、それでいながらこれだけすてきな写真になっています。プロってすごいですね。私の料理がいい感じに見えます。とっても安いウールのペルシャ絨毯も、雰囲気があるかのようなことになっています。ちなみに、グラノーラを盛りつけた写真で下に敷いているのは、冨田潤のテーブルランナーです。職人たちの仕事場も、応量器ができるまでの工程と抑えるべきポイントを説明しながら採り上げられています。



私が使っている食器は、56ページで写っているものが全てです。他は、段ボール箱に入れて、遠く離れた物置にあります。つまり、食器棚ではありません。友人知人が来るときに、何かふるまう場合にのみ、段ボールから取り出します。実際に私ひとりが暮らしていくなら、56ページの写真に写っているものでも多いらいです。カップは1つでいいし、椀は応量器にもあるので不要です。

FINAL HOMEというブランドがあります。ちょうど21美にて6月いっぱいまで展示が続いています。私は、そこの、名前の基となった「家をなくしてしまったとき、人を最後にプロテクトするのは服になる」というコンセプトから考案されたオレンジ色のコートを持っています。割としょっちゅう着ています。ポケットだらけでいろいろ入って、両手が自由だからです。で、それをデザインした方とフェイスブックで交流できるようになり、世の中すごいなあと思いつつ(私が作った漆器を使っている様子も観ることができ、これも昔の作り手ではなかなか体験できない喜びです)、デザイナーの津村様とのメッセージのやりとりで

「私はFinal Tablewareを作っている」

と、はずかしげもなくいけしゃあしゃあと言ってのけて送信してしまいました。そのときの私は、たぶん相当のドヤ顔だったに違いありません。今に思えば顔から火が出ます。とはいうものの、心の片隅では少なからずそう思っているのもまた事実です。もし、ひとつだけしか食器を所有できないとしたら、何を選ぶでしょうか。



数年前から、シンプルな生活と呼ばれている何かに、バイアスがかかってきているような感覚があります。断捨離(よりにもよって登録商標なんですよ、バズワードです)などは最たるもの。最初から買わなきゃいいだけです。お金を払ってゴミを買う、というのがこの世の中の大前提であることは否定できません。ならば、自分はどうするか、というのが大事で、それこそが「ライフスタイルセレクト」です。生活様式や態度を、雑誌やライフスタイルセレクトショップに頼っていては、そんなの無意味。必要最低限の生活をすることと、厳選して削ぎ落とすことは、だいぶ違います。また、丁寧に暮らすことと、楽だったり快適だったりする暮らしは、違います。全然違います。微分積分とセブンイレブンくらい違います。オーガニックコットンのタオルを水道水で洗濯して台無しにするのは、後者です。

しかしまあ皆さんたくさん食器を持っていらっしゃる。おまけに陶器が多くて漆器がほとんどないというのも目の当たりにしちゃうわけで、天然生活でこれならクウネルやリンカランや自遊人も大差ないでしょうし、エルデコやブルータスカーサのような暮らしだと漆器の入る余地など皆無ですね。と思ってしまったら、それでおしまい。ほとんど手つかずじゃないか、これからどれだけでも入り込めるじゃないか、と思う人こそ開拓者です。だって、エルデコを定期購読していたり掲載されたり、あるいはWhitebookが自宅に届くような方のほうが所得も高いだろうし、ってことは高額な漆器を売れるはずです。でもなぜ難しいのか。理由はふたつあります。それは、いつか気が向いたら書きます。



取材時、かなり漆器業界の内情についてお話ししました。もちろん一切そういうのは誌面に反映されておりません。なぜなら、これまで雑誌と雑誌に登場した人たちが愛用しているものがダメだと明らかになるようなことは、雑誌としては書くことができませんからね。名前だけ有名な作り手の漆器が実は粗悪だったり、国産漆の産地が漆器を作っていて塗りの漆は置いといてもその木地や下地はどうなのか、といったことまで掘り下げはじめたら、何も掲載できなくなっちゃいますからね。世の中全てかくのごとし。でも、そんなふうに全てを明らかにするメディア、書き手が登場しないものか、私はかすかに望んでおります。合掌。

ともあれ、読み応えのある特集です。ぜひお手にとってみてください。

些か大げさではありますが、早くも使い古されつつある言葉を最後に、つらつら書いた今回のブログ記事を締めたいと思います。


人類よ。これ以上、何を望むのだ?


(とあるゲームのキャッチです。すごいですよね)

地球丸:天然生活
Amazon.co.jp:天然生活2013年4月号
関連記事