Pro Naturaのエルゴフレックス・マットレスシステム



マットレス。

10年ちょっと前。眠るためのものではなく宇宙飛行における衝撃緩和材なのだけれどレトリックだかステマだかゴリ押しだかに引っかかって大ブームとなった低反発。そして低反発は体に良くないと徐々に知られて来た反動で登場した、高反発。さらには正反発なるものまで出てきて、結局どれがいいのという状態となっているマットレスの世界。シモンズ、シーリー、サータ、いわゆる3Sと呼ばれるアメリカ大手の分厚い粗大ゴミマットレスも相変わらずの人気です。ブランドとしての力が強いのか、憧れのベッドという雰囲気まで醸しています。見方を変えれば「愚鈍」と言ったら流石に言い過ぎかもしれませぬが、分厚いそれは正直申しまして愚鈍な印象を抱かざるを得ないのもまた事実。しかもシモンズなどはアメリカ本国と日本とではラインナップが異なり、単なるライセンス商品に過ぎません。というかアメリカのマットレス業界が、ライセンスビジネスの巣窟なわけです。

ウェスティンのヘブンリーベッド(シモンズの日本向け)も2004年から恵比寿のウェスティンへ何度か泊まって体験済みです。しかしながらそこまで売りにするほどものもなのか、よくあるポケットコイルのベッドでした。寝心地も特筆すべきものはありませんでした。ちなみにウェスティンのネットショップで28万円です(この28万円というのを覚えといてください)。その他に有名どころとしては、皇室御用達の日本ベッドは安定しています。そして最近では、スポーツ選手と契約して高品質高性能であるかのように謳っているさまざまな石油製品も、突発的なブームになったりならなかったり。

眠っているときの姿勢は、どういう状態が良いか。
そんなの簡単な話です。
立っているときの姿勢になってればいいんです。
仰向けのときも、横向きのときも。

そんで選んだのは、エルゴフレックス。
全体像は、 このページ にある通り。
ウッドスプリングと、馬毛入り布団のセパレート。
 

低反発は、次第に臀部を中心に体全体が沈み込んでいきます。その状態を、立ったときに置き換えると、前屈みになっています。で、全体が沈み込むので、寝返りを打つのも一苦労。おまけに夏と冬では硬さが変わり、しかも夏は蒸れます。石油製品なのだから当然の話。一方、高反発は、沈み込んでほしい臀部なども沈み込みません。低反発にしても高反発にしても、疲れをとって体の健康を取り戻すための睡眠が、疲れる要因となってしまうのです。そんなの、ただでもいらないよね。

では残る正反発とは何ぞやという話になります。これは主にラテックスのマットレスでよく使われている言葉。沈んでほしいところは沈み、沈まなくていいところは沈まない、という素晴らしい性質を持っています。さらに素材が天然ゴムなら文句なしです。10年使ってもヘタリが1%未満という試験結果もあるように、金属コイルのマットレスよりも長持ちし、天然ゴムなので捨てるときは切り刻んで燃えるゴミに出せばいいという、良いことづくし。ただし、夏は蒸れるので、ベッドパッド必須です。ヨーロッパで主流となっているラテックスのマットレスは、各メーカーそれぞれ特徴があります。なので、よく調べるのが良いと思います。

以上、大まかな区別の話はおしまい。

私が使っているのは、プロナトゥーラというオーストリアの寝具メーカーが作っているマットレスシステム、エルゴフレックス。特長がありすぎてどこからどう説明すればいいのかわかんなくなるほどすばらしいです。日本の代理店のサイトにある文章を丸々コピペします。これが企業姿勢だと私は思います。企業姿勢があって、そこから設計思想が生まれ導かれる。まっとうな素材を使って、まっとうに作る。現代ではこれが非常に珍しいという悲しい現実の中、寝具にプロナトゥーラが存在することは非常に貴重な幸運と言えます。私は、強く強く共感しました。


ProNaturaが自然素材を使用するのは、心地よい、というだけの理由ではありません。石油などから生産される化学合成繊維や合成ウレタンは、コストも安く、加工や着色が楽で、また商品の取扱いも楽な為、多くの寝具に利用されていますが、

 ・静電気を発生させる
 ・熱輻射をおこして身体にストレスを与える
 ・吸湿性が低く、暑苦しさが改善されない
 ・身体の調湿作用を損なうので、湿疹やアトピー等の症状を悪化させると言われる
 ・製造・廃棄段階で環境を破壊する
 ・加工時に使用された有害物質が使用する人や環境を汚染する


などのデメリットは、「睡眠を真剣に考えた」企業姿勢を持っていれば、使ってはならない素材であり、何より、自然素材を使わない理由がありません。


ポリサイトサーフェーサーで下地したり、艶出しに石油を使ったりしているのに「素材:木・漆」なんつってる漆器屋に爪の垢を飲ませたいくらいですね。山中の同業者や輪島の有名人に話を聞くと「高いから」「見た目は変わんないし」という答えが返ってきます。まあ、そういうことなのでしょう。しかしながら私が不思議に思うのは、同業者の多くは一方で「付加価値をつけたい」とか、よくわからないことをいつも言っています。要は「高く売りたい」のです。安く仕入れて高く売る。商売としては正解ですが、ものづくりとしては間違っています。そんなに価格を高くして売りたいなら、とことん素材にこだわって、他では真似のできない技術で作ればいいだけの話です。でもなぜか、そうしません。どんどん製造は手抜き、そして価格は上げたい、というわけです。そんなの無理ですよ。そこで出てくるのが「デザイン」なる横文字なわけですが、話が逸れてしまっているのでこれくらいにしときます。

私のもの選びは、できる限り石油を使っていないもの、化学物質ではないもの、です。人間にとって重要な眠りのためのアイテムも、同じ。化学繊維は不快感の塊ですし、ウレタンのマットレスも不快感の塊。性能としても機能としても耐久性としても、自然素材と比べれば段違いに劣ります。エルゴフレックスは、ケミカルフリーでメタルフリー。眠るには最高の環境です。ただし、ジッパーが金属なんですけれどね。


ロースハー(馬毛)で、幅140cm(ダブル)という印がついています。

エルゴフレックスは、ラテックスで支えたウッドスプリングと、羊毛と馬毛の詰まったマットレスと、ふたつに分かれています。なのでマットレス「システム」というわけです。セパレートにしたのも意味があり、耐用年数に違いがあるそうです。一体型だと全部買い替えなきゃいけませんが、セパレートなら駄目になった片方だけを買い替えればいいだけです。何という親切なメーカーでしょうか。

日本法人公式サイト:2つで1つのマットレスである必要性

ではまずウッドスプリングのほうからご紹介。オーガニックコットンに包まれた天然ラテックスは弾力があり、それ単体でも正反発のマットレスとして機能する素材。沈んでほしいところだけ沈んでくれます。ラテックスの脚というか支えというか、それは高さ10cmほどあります。ベッドフレームの上に置いたら、見慣れない風景になります。そして、ウッドスプリング。素材はブナで、もちろん無塗装。「呼吸してくれる」というのがエルゴフレックス全体の特長のひとつでもあります。ウッドスプリングは40本あり、とことん通気性にこだわっていて、1本1本に細かな溝が刻まれています。そして全体のフォルムは、飛行機の翼のような断面をしています。安心感があります。廉価なウッドスプリングは、スプリングでなかったり、上に立つと折れたりするものもあります。ひとくちにウッドスプリングといっても、さまざまです。

ウッドスプリングのすばらしいところは、横向きに寝たとき実感します。肩と腰の骨が沈み、背骨が水平にまっすぐを保ちます(これはとても簡単なので、マットレスを購入するときは横向きに寝てみてください)。力のかかるウッドスプリングが沈みます。とはいっても沈んだら沈みっぱなしの低反発とは異なり、ラテックスの脚だか支えだかがあるので、姿勢を変えたり寝返りを打ったりするのも楽々、というか意識していません。ウエストのようなくびれてる箇所は、そのまんまフィットします。ウッドスプリングは、丈夫なことは大前提、そしてラテックスで支えているものを選ぶのが良いでしょう。



マットレスは、これまたすごい素材を集めてあります。芯の部分は馬毛、それを覆う麻の布、そんで上下を羊毛でサンドイッチ、側地はオーガニックコットン。まずは、なんといっても馬毛。最も優れた天然繊維とも言われている馬毛。昔のソファや、昔のメルセデスのシートなどは、だいたい中は馬毛です。コシがあってクッション性に優れていて、耐久性があり、ヘタらず、クッション性が長持ち。そして通気性は抜群。でも今ではヨーロッパでもモンゴルでも人びとは馬から降りてクルマに乗っているため、なかなか詰め物素材としては集まらず、高級素材となっています。もはや世界唯一ともいえる馬毛のマットレスを作っているムースブルガーの馬毛マットレスは、100年使えると言われています。お値段もそれなりですけれどね。それくらい、弾力が長持ちするのです。ただし、エルゴフレックスの中に入っている馬毛と、ムースブルガーの馬毛とでは、もともとの素材としても違いますし、その後の技術的なことも違います。割と違います。地黒とジゴロくらい違います。


かよわい私の指1本でこれだけ凹む、ウッドスプリング(の下の天然ラテックス)。


馬毛の性質を、方向性はそのままで、かなり劣化したバージョンが、釣り糸などを射出成型する機械を作っていた会社が出したエアウィーヴや、東洋紡のブレスエアーや、東洋紡が作っているのにあたかも自社オリジナルであるかのように謳っているいかにもあっちの企業という感じなアイリスオーヤマのエアリーマットレスといった、要は石油由来の化学繊維を絡めた代物だと考えております。

そんな馬毛を芯にして、まわりは羊毛。いわゆるウールです。私の好きな素材のひとつ。前回の「my favorite things」カテゴリ記事で熱弁しちゃっているように、ウールは温度調節に優れていて、くさくならず、汗を吸ってくれて放出してくれて、真冬でも真夏でも快適。羊毛の敷布団というと薄っぺらいものを想像しがち。あれはもはやベッドパッドです。エルゴフレックスには、たっっっぷり詰まっています。そして、馬毛と羊毛の間には、麻を挟んであります。これまた、綿とは違ってくさくならず、通気性に優れ、吸湿放湿度に優れ、丈夫で、そして熱伝導率の高い素材。そしてマットレスというか敷布団というか、エルゴフレックスの上半分は、オーガニックコットンで包まれています。かなり丈夫な織りです。


中身を観てみました。上が馬毛、下が羊毛。間に麻。

そんなこんなの代償として、かなり重いです。これはエルゴフレックス唯一のマイナス点。でも、ラテックスのマットレスに比べれば軽いです。私のがダブルというのもありますが、シングルでも結構な重さではあると思います。とはいっても、アメリカ大手の粗大ゴミほどは重くないです。成人男性なら持ててあたりまえの重さです。そして、捨てるときに余計なことを考えなくていいというのがすばらしいです。

素材の話が長くなってしまいました。機能としては、他のあらゆるマットレスにはない特長を持っています。両サイドを含めて6本のラテックスが、ウッドスプリングを支えています(私のはダブルなので6本ですが、シングルやセミダブルは4本)。このラテックスの脚というか支えというか、これの間隔を拡げたり狭めたりできます。たくさん沈んでほしい場合は、自分の体のラインより少し外側に。あまり沈まなくていい場合は、体のラインに沿わせたり少し内側に。さらに、肩や腰の沈み込みが「足りない」場合は、その箇所のウッドスプリングを抜いちゃえばいい。反対に、ウエストのくびれなどがもうひとつフィット感に欠けていたら、そこにウッドスプリングを重ねて置いちゃえばいい。文字通り「ひとりひとりの体に合わせる」ことができるのです。沈み込む具合までも。そして、この調節は、一度やったらもうできない(世の中の多くの「オーダーメイド」が、これです)わけではなく、いつでもできます。つまり、自分の体型が太ったり痩せたりしても、調節するだけでぴったりというわけです。


私が使っているのはダブルのため、ラテックスが間に4本あります。

エルゴフレックスで眠るようになってから、ぐっすり熟睡できるようになりました。だらだらと睡眠時間が長くなることもなく、目覚めはすっきりしゃっきり。体が痛いことなんてないし、疲れがとれている。でも、どれだけ寝ていても体が痛くならないので、休日の朝、昨晩読んでいた書物をうっかり手にしちゃって続きを読んでたら、あっという間に6時間経ってた、なんてこともあったりなかったりします。それくらい、優れものです。ウレタンやコイルのマットレスは、ずーっとその上にいたら「どんな姿勢になっても痛い」時が必ず来ます。エルゴフレックスには、それがありません。ということは、力が入っていない状態を保てるということで、眠っているときに力が入っていないということで、それはまあ当たり前のことなのだけれども、そんなわけだから体がどこも疲れないのです。また、エルゴフレックスは日本向けにアレンジされていて、布団のように三つ折りできます。床に敷いて使うこともでき、和室で寝るにも最適な「敷布団」でもあります。ただし、湿度の高い部屋では、すのこを敷いたほうが良いでしょう。


重ねれば、そんなもんです。シーツをかければ見た目も特に変わった様子ではなくなります。

気になるお値段は、シングルサイズ(幅100センチ。ヨーロッパではもうちょっと幅の狭いベッドも割と多くて、エルゴフレックスも80センチと90センチと100センチがあります。「シングルサイズ」という概念は日本独特のものです)で標準価格は25万円と消費税。何とびっくり、これだけのもので、ヘブンリーベッドよりも廉価なのです。高性能で、自然素材で、金属コイルとは比べものにならない耐久性。これこそが「お、値段以上」ではなかろうか。ものの値段って不思議ですよね。

追記;
プロナトゥーラ日本法人の代表であるマテー氏と少しお話をしたことがある。彼は筋金入りの電磁波や地磁場嫌いで、日本法人は八ヶ岳の麓にある。家電製品を寝床の近くに置かないほうがいいと言われるようになったのは、つい最近のこと。マテーは、もっと詳しく「寝室の環境」について研究をしている。そして、ウールはカビやすいと言われたら「人間がカビたかもしれないのをウールがカビてくれてる」とか、なかなか視点のおもしろい方。自然素材をこよなく愛している。たぶん冬は北陸並みに寒いであろう八ヶ岳山麓で、真冬でも羊毛掛布団で寝ている。とてもいい人物という印象を強く強く持ったので「メタルフリーって言ってるけど、エルゴフレックスにはジッパー使われてるよね」という私が用意しておいた言葉は、発せなかった。

Pro Natura日本法人公式サイト:エルゴフレックス
楽天市場:エルゴフレックス
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