マリア・ピア・デ・ヴィト IL PERGOLESE



【ECM2340】
12月に入ってから、知人と友人の間のどこか、といった方々に「今年買ったCDや本の中でいちばん良かったのは何?」と話のついでに尋ねていた。いちばん多かった答えは「CDは1枚も買ってない」だ。オリコンランキングとカラオケランキングがこれほどまでにまるで違うように、いつの間にか時代は変わり、CDを購入するというのが--店舗で手にして購入するにしろネット通販で購入するにしろ--急激に減っていることを実感しました。このブログを始めたころは音楽と言えばCDが主流でした。光陰矢の如しですね。そして未だにCDを購入している私は、もしかすると途方もない無駄をしているのかもしれません。もちろんメインはSACDなんですけれどね。そしてそもそも、オーディオを持っていない人が多数となったこのご時世、SACDとアナログにこだわり続けている時点で私は前世紀の人間なのでしょう。余計な話が長くなりました。



冬になると出番の多い、寒さの質が変わるECMの音色。暖かくなるわけでもないし、寒さ厳しくなるわけでもない。静かに、煮こごりのような感じになる。その静かさが好きです。この、イタリアの歌姫と言われているらしいけれどそんなふうにはあまり聞かないマリア・ピア・デ・ヴィトの新譜は、いつものECM以上に、静かで、空気のひんやり感の質変化も大きい。寒い冬、しーんとした部屋で、空気は出入りも循環もしていないかのように見えて冷気は確実に忍び寄っている、そこに、さらなる静けさを付加できる、音楽のはずなのに沈黙を意識できてしまうECMのマジックが格別に堪能できる一枚。


昨年はじめから、音楽はSACDを再生できるレシーバーと、ウィーンアコースティックのスピーカーで聴くことがほとんどとなっております。ディアパソンのように濃くはないけれど、美麗です。さすが音楽の国オーストリアで作られたスピーカーです。

マリア・ピア・デ・ヴィトがボーカル。バックは、チェロとパーカッションとピアノ。テンポの速い箇所もあるし、かすかに情熱的な何かが垣間見えなくもない箇所もあるのだけれど、この「空間を支配する空気への浸透力」は凄まじい。沈思黙考に最適なBGMとも言えるでしょう。使い道が多彩なお買い得品とも言えるのかもしれませんね。

陰翳があり、なおかつ結晶のような透明感もある、なかなかない音楽です。

歌姫というより、他人のことなど眼中になく、何かをやっているかのように映る。祈っているように映るし、地面を掘っているいるようにも映る。樹を育てているようにも映るし、雲を生んだり消したりしているようにも映る。わけがわかりませんね。たぶん、曲を聴いても何を言ってるのか解らないと思います。なんといっても、私の中で居場所が落ち着いていないのですから。

ライブやテレビ出演の映像を観ると、なかなかがっしりした体格のイタリア姉ちゃんという感じで、YouTubeで観ないほうがイメージを壊さないかもしれません。ECMの音づくりが、本来の姿ではないという可能性がとてもたかいのだけれどね。

というわけで、静かに、静かに、今年が終わり、新しい年がやってきます。


ECM公式サイト:IL PERGOLESE
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