フレンチウイスキー バスティーユ1789



ウイスキーならニッカを与えておけば満足する私。スコッチは割と普通な感じのもの(タリスカーなど)をちびっと飲む程度で、バーボンはブッカーノウズやエライジャクレイグなど「バーボンらしさ」が失われるくらいよく作られたものを飲みます。常識的な価格でいちばん好きなのはニッカのフロム・ザ・バレル。しかし、あるウイスキーを知ってしまいました。まさかのフレンチウイスキー、バスティーユ1789です。ウイスキーなんて飲まない、という女性にこそ、ぜひ一度試してもらいたい。
 


私は甘い酒が好きで、リキュールをそのままストレートで飲むことが多い。いつぞやのマリエンホーフもそうだ。スプーン1杯のリキュールを飲んで眠りにつく、というのは日常の楽しみの中でもかなり上位に来る。でもあまり知られていないし、そんなのが日本全国で習慣化して私の好きなリキュールが品薄になったら困るので、広まらなくていい。

そんな甘い酒が好きな私でも、だからこそと言うべきか、凄まじく辛口の酒も好きです。石川県の酒でいちばん好きな手取川は超辛口です。すさまじくすっきりしたウォッカを炭酸水で割って飲むのも好きです。それでまあ私の世代はウイスキーなぞ飲むきっかけがないわけで、思い起こせば大学に入ってから江古田の場末のバーで先輩がボトルを入れたのを頂戴するのがきっかけだったのだがそんなの極めて稀なケースであって、カラオケボックスができはじめた当時みんなが飲んでいたのはカシスオレンジとかカシスウーロンとかモスコミュールとかだった。トニックウォーターはブラックライトで光るのでクラブでは敬遠された。

そんで1990年代はワインブームだったし私も大人になればそれなりにワインを嗜むようになり、そうなればシャンパーニュに行ってしまう。田舎に引っ込んでからは日本酒が増えた。これはもう空気のせいである。東京で日本酒を飲んでも旨くもなんともない。ビールやワインやカシスウーロンでいい。このあたりは暴論なので読み飛ばして結構です。

それで、何で知ったのか今では全く覚えていないのだけれど、数年前に「フレンチウィスキー」なるものがあることを知った。しかも産地はコニャック。コニャック地方でブランデーではなくウイスキーを作るなど、地元では莫迦扱いされたかもしれないとお気持ち察してしまう。しかしそこはさすが「おフランス」である、華やかな香りだそうだ。これは絶対に私の好みだと確信し、うさんくさいネット通販の酒屋のカートに入れた(まだ当時はアマゾンにも楽天にもなかった)。届いたのは、エルメスを彷彿とさせるオレンジ色の箱に入った、四角四面なやつ。エレガントというよりは、スタイリッシュ。つまり、何の変哲もないボトルデザイン。ハンドクラフテッドと書いてあるが、だいたいどれもそうだろう。1789というのは、このウイスキーを樽に入れた年なわけがなく、バスチーユ牢獄襲撃の年。ということは、革命的なウイスキーなのかもしれないし、単にあやかっているだけかもしれない。



グラスに注ぎ、そのまま口に含んでみた。ふわぁぁぁぁぁーーーっと華やかな香りが広がった。口と鼻腔で、桜吹雪よりも、いままさにピークの金木犀よりも、花が咲き乱れて飛び散る。これはうまい。私にとっては清水の下の三年坂の階段を3つくらい飛び降りるくらいの覚悟が必要な値段だが、これはうまい。リキュールのようにスプーン1杯で満足できる。

では、香りではなく味はどうか。リキュールのように甘くなく、ちゃんとしたウイスキーである。ウイスキーなのだから当たり前なのだけれど、ここまで香りが華やかで強いと、甘ったるいんじゃないかと思ってしまう。ウイスキーの中でもくせのないジャパニーズウイスキーに似ている。焦げくささや辛みや渋みや刺激は全くない。植物の成分をそのまま活かした香りと味というわけだ。お酒のことをよく判らない人に「これは若いブランデーだよ」と言って飲ませれば信じそうなくらい。

その後、酒に詳しい周囲の人に飲ませてまわった。いい迷惑だったか、こりゃラッキーと思ったかは判らない。だが、スコッチでもバーボンでもカナディアンでもジャパニーズでもないこのバスティーユが、ウィスキーだとは信じられないくらいパリの芳香をむんむんと放っていることには全員が驚いた。華やかな香りなのに、ウィスキーなのだから。その「華やかな香りなのに、ウィスキー」というのは、ウィスキーを基に甘く華やかな香りをつけたリキュールとは違う。全然違う。ショートケーキと消毒液くらい違う。サザンカンフォートなどは駆逐されてしまうのではないかとすら思った。

東京なら珍しくないのだろうが、石川県には恐らく1軒も置いてあるバーはないだろう。ここ数年で20軒以上のバーへ行ったが、バスティーユはなかった。そもそも酒屋にない。なので送料はかかるがネットで購入するしかない。ともあれ、以来、ニッカのウヰスキー(それは1500円程度で購入できる余市ですら充分にうまい)の合間に、バスティーユを購入することが増えた。年に1本か2本くらいのペースだ。何か変わった酒はないかな、などと言ってる知人がいたら、マリエンホーフの他にバスティーユの名前を出すようになった。たまに、自分で購入してどんな味か確かめる人がいる。そういう人のことは、割と好きです。

フランスでウイスキーを作るとこうなる、ということが判った今、イタリアでウイスキーを作ったらどんな感じになるのか、ドイツなら、デンマークなら、などと想像してしまいます。

BASTILLE Hand-Crafted Whisky:公式サイト

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