サンタマリアノヴェッラのリキュール メディーチェオ



先日、名古屋のサンタ・マリア・ノヴェッラで、お茶とアイスクリームを頂戴してきました。実に八年ぶり。そんなわけで名古屋のティサネリアとそこで購入したリキュールの話。
サンタマリアノヴェッラ・ティサネリアということで、日本で名古屋のショップのみイートインスペースがある。はずだったのだが、同じヤマノアンドアソシエイツの経営による京都店も知らぬ間にティサネリアとなっていて、驚くべきことにワインも飲めるレストランとなっている。どこまでハーブと薬効にこだわったメニューなのかは、京都のティサネリアには行ったことがないので知らない。

名古屋では、ハーブティを注文すると山盛りの焼菓子が出てきて、メニューを見ただけだとハーブティでこんな値段すんのと目玉が飛び出るかもしれませんが、ハーブティはポットでたっぷりとサーブされるし、山盛りの焼菓子がついてくるので、おすすめです。他にもサラダやドルチェなど、サンタマリアノヴェッラらしいハーブを多用というかむしろハーブのみで織りなされる食べものが豊富にあります。


※撮影許可を頂いております

昨年八月に腸閉塞を患ったことは既にブログでも書いた通り。それまでは夏だったものでコーヒーをフレンチプレスや水出しでがぶ飲みしていたのが影響あったのかなと思ったり思わなかったりで、医者からはカフェインを控えるように言われ、それからデカフェの飲みものを主に飲むようになった。甘茶、ハーブティ、などなど。

話は逸れるが、コーヒーと紅茶と緑茶、どれがカフェイン多いのというグーグル先生に尋ねれば一発で判ることを、たまに尋ねられる。なぜだか世の中にはグーグルで検索せずに他人に聞くという人がたまにいて、もし何か教わったことが間違いであっても鵜呑みにするのだろうかと常日頃から疑問で、私は時折その手の検索したほうが早くて幅広く多岐にわたる疑問質問に対して、嘘や正反対のことを答える。ちなみに1杯ぶんで最もカフェインが多いのは、コーヒーだ。紅茶の3倍にも及ぶ。話を戻す。


テーブルの上そのままの画像


白い紙を敷いた上にカップを置いた画像

サンタマリアノヴェッラ・ティサネリアは店員も全員女性で客も女性ばかり。そりゃまあそうだ。そんな中におっさんが紛れ込むのを店員や他の客がどう思うかは、気にしない。気にしたら行けなくなるからである。ただ、少なくとも私は、店の格を落としたり雰囲気を台無しにするような「雰囲気」ではないようにと心がけている。どこに限らず。そんなこんなで、女性だけの中に、たとえ女性と一緒にいたとしてもいなかったとしても、割と平気だったりする。二十年以上前、新宿に女性限定でカップルなら男性も入れるというカフェがあって、まともな神経を持った男ならそんな店には近づかないのだが、私は物珍しさもあって行ったことがある。さすがにすぐ潰れたようで、私の記憶からも即座に抹消された。なぜかいま思い出した。

女性を相手にした商売であっても、女性限定にするのはリスクが生じる。

中途半端な時間帯を狙ったつもりなのだけれど満席だったので、待っている間、茶を飲んでから選ぼうと思っていたハーブティとリキュールを選んだ。リキュールについて少し尋ねると、試飲できた。その場の雰囲気を壊さないように心がけていると、良いことがある。サンタマリアノヴェッラは現存する最古の薬局であるので、当然リキュールにも薬効がある。イタリアのリキュールは原材料を表示しなくてもよく、有名どころだとカンパリは赤色が虫だか着色料だかというのは知られているが、その他の成分については全くのブラックボックスだ。味からいってオレンジなのは間違いないけれど。そんなわけで、修道院で作られる薬としてのリキュールがイタリアやフランスには沢山ある。なので、修道院ではなく薬局であるサンタマリアノヴェッラがリキュールを製造販売するのは何らおかしなことではない。そして、原材料を表示している。これは、同じ材料を使っても、ここまでできないだろ、という自信の現れでもある。

飲食店で、現在は下火になりつつあるが「秘伝のスパイス」とか謳うところが、悲しいことに田舎町の金沢や加賀には今もある。でもそれは、明らかにできない何かしらの理由があって、明かせないエクスキューズとしてそう言っているケースが殆どだ。同じ材料を使っても美味しく作るのがプロなのだし、秘伝のなんて言う飲食店は、その発言から色々と察してしまう。そしてそれは、だいたい当たる。

話がどんどん逸れてしまったが、そういうわけで腸に自信を失くしている最中の私が購入したリキュールは「リケール・メディーチェオ」という名前の黄緑色をしたもの。いかにも薬草系のリキュールという色だ。でも、薬草系のリキュールが好きな人にはもちろん、そういうのが苦手な人、甘いリキュールが好きな人にもおすすめ。



かれこれ十年くらい前から、リキュールをスプーン1杯だけ飲んで寝るというのが「まれによくある」習慣となっております。私はアル中ではなく、酒がなくても何ら変わることなく生きていける人間で、2017年4月などはアルコールを摂取したのがビール30ミリリットルくらいという少なさです。それくらい、なくても構わない。で、まれによくあるという状態について説明すると、リキュールを購入したらしばらく毎晩ひとくち飲むのだが、それがなくなったら次にリキュールを購入するまで飲まなくなる、ということだ。だいたい年に3本か4本。銘柄は、ヘーゼルナッツのリキュールであるフランジェリコが多く、他にシャルトリューズ、ガリアーノ、カンパリ、ごく稀にマリエンホフの何か、さらに稀なパスティス、といった具合。薬草系というか修道院系というか、そういうのが好きなようだ。ちなみにシャルトリューズは不老不死の薬として修道院に伝わった。良薬は口に苦けれど病に利あり。

サンタマリアノヴェッラは現存する最古の薬局なので、リキュールも製造販売している。もちろん薬草系だ。あるいは、ハーブ系と言ったほうが正しいかもしれない。サンタマリアノヴェッラは修道院の名前であり、その修道院の周囲に生えていた薬草の名前でもある。その薬草は、薬草系リキュールの定番シャルトリューズにも使われている。そんなサンタマリアノヴェッラが造るリキュールは4種類。私にとって「必要」なのは、2つ。緑色のものと、赤色のもの。味は異なるし、薬効も異なる。薬効についてはよくわからないしプラシーボではあるが、確かに調子が良くなる。プラシーボってすごい。などと言うとサンタマリアノヴェッラに失礼なので、プラシーボだけではないはずでございます。少なくとも養命酒よりは私に効いていると確信を持って言える。全然プラシーボだけではない。



さて、そんなこんなでリケール・メディーチェオについて。名前は、メディチ家のリキュールという意味。原材料は、レモンバーム、マジョラム、シナモン、ペパーミント、コリアンダー、カルダモン、ジンジャー、クローブ、フェンネル種子、ジュニパーベリー。アルコールではなく、水とエタノールというのもサンタマリアノヴェッラらしい。胃の弱い方や冷え症の方に、とのことで、これも何度か書いたことなのだけれど昨年の夏に腸閉塞となり、それからは何となく胃腸をいたわる食生活を送っている。つまり、消化の良いものだ。話は逸れるが「胃腸に優しい」と巷間喧伝される食べものには幾つかのタイプがある。そのひとつに、なぜか食物繊維がある。それは大きな間違いで、むしろ腸への負担が半端ない。そんな真逆なことを言いふらす人は、消化吸収しないから胃腸に優しいとでも思っているのだろうか。私はキノコと海草が大好物で、それなのに腸閉塞になって治ってからも二か月くらいはキノコと海草の摂取を控えた。腸閉塞になったとき、とてもとても痛かったから。もうあんな痛い思いをするのは嫌だから。食物繊維は胃腸に優しくないどころか最も攻撃的です。お間違えのないよう覚えておいてください。話を戻すと、そうした理由により今回は胃の弱い方にという緑色を選んだというわけだ。冷え症ではない。

また話は逸れるが、冷え症とは何か。筋肉と血管の問題だ。特に、末端冷え症とかいうのは、それだ。ジョギングでもすれば改善される。体温が低いのも筋肉がないからだ。脂肪は、冷たい。そうやって体を作ってこそ「体質改善」たりうる。何かお手軽に(そしてなおかつオシャレに)劇的な体質改善ができるなんてことは、ありえない。地道に努力を重ねていれば、ふと気づいたときに以前とは違っている。もちろん有酸素運動などの身体活動だけではなく食生活も関係あるのだけれど、その話まで始めると異様に長くなるので別の機会に。

話を戻すと、薬効は気分的なものなので(私にとっては)、何が重要かというと、味だ。21世紀に生きる20世紀に生まれた私にとってリキュールは薬ではなく酒なのだから。眠る前に一匙飲み、良い感じで眠りへといざなわれる、そんな酒。飲んだら眠りが浅くなるとか脱水症状とか肝臓への負担とかいったものとは無縁の、ナイトキャップ。そういうことをやっている人は少ないと自覚しているし酒は酒なので、他人様には強制しない。そしてリキュールはナイトキャップとしても機能するが、それだけではない。陽光きらめく気持ちの良い午後に、炭酸水で割って飲んだりするのも良い。

イタリアのリキュールなのだからベネチアングラスの小さなリキュールグラスで飲むのが正統なのだろう。いかにもハンニバル・レクターが好みそうなムードだ。あるいはバカラのバッキンガムやアンペラトールのように彫刻的なリキュールグラス。だが私はそんなグラスなど持っていない。それどころか、リキュールをスプーンで飲んでいるのだ。味と香りを存分に堪能するなら、ひとくちでいい。でもそれでは余りにも絵にならないので、ウィスキーのテイスティング用のグラス(ワイン以外は最近こればかりである)で飲んでみる。ちなみに私が使っているこれは、ウィスキーが根付いているとは到底思えないイタリア製で、おかしな話だがマッチしていなくもない。蓋もあるので香りが揮発しにくい。ほとんど蓋は使わないけど。ガラスの中の液体を撮るのはなかなか難しいため、なんか変な画像ではありますが、こんな色。ワインの色を見るときの傾け方ではあるが、こんな方向からは見ない。それくらい私も分かってるけど、こうしないと撮れない。



リキュールには少なくないタイプで、とろみがある。とろみは、主に糖質による。すなわち、甘い。甘いとどうなるか。美味しくなる。薬草系や修道院系のリキュールが一般的に美味しくないとされるのは、甘くないからだ。いかにも「草」という香りと味で、苦味はあたりまえ、さらに渋みまで針が振り切っているものもある。でもサンタマリアノヴェッラのリキュールは、甘くておいしい。単に甘いだけではなく、様々なエキスが濃密にブレンドされて初めてここまで到達できるというレベルで、味がある。非常に奥深い。余韻も素晴らしい。

苦味や渋みは、胃腸に効くものなのか否か。私は医師でも薬剤師でもないので知らない。ただ、腸閉塞にかかったとき、口にして良いものは「ぐずぐずに煮込んだ炭水化物」だけだった。それどころか最初の三日間は固形物は全部駄目でポカリを飲むだけだった。ポカリも主に糖質である。そして消化に良い。何の負担もない。砂糖は老化を早めるなどと言われているが、それは単に摂り過ぎなだけであって、完全に摂らないのもスカスカである。胃腸に負担をかけずにエネルギーを摂取できるのだから、それを摂取しないとなると体の負担はものすごいことになる。糖質制限する人が例外なく早死にする、あれです。

グラスに10ミリリットルくらい注ぐ。グラスを回す。10ミリリットルくらいしかないので、回すと遠心力によってグラスの内側の側面に広がり、底には残っていない。その状態で、香りを吸い込む。空気に触れた甘美な香りが、鼻腔を撫でる。これは飲食物に当てはめる「フレーバー」という言葉ではなく、香水に当てはめる「フレグランス」という言葉が相応しいとすら思え「香り」だ。そしてその香りは、ただ甘美なだけではなく、芳醇なハーブの香りも湛えている。しばらくするとグラスの内側の側面に広がっていたリキュールは再びグラスの底へと集まる。グラスを傾け、口に含む。一緒に空気を吸いながら。つまり、啜る。口に含んだ瞬間、全身にリキュールの香りが広がる。あっという間に胃から全身の皮膚にまで広がるかのような錯覚に陥る。音のない世界で爆発したかのようだ。そして、その広がる香りには、不快な要素が全くない。全身をアロマオイルで洗われたかのようにも感じる。体の表面から浸透しているのかしていないのか判らない、あのアロマオイルによるマッサージのようなもの(マッサージという言葉は国家資格を持っている人だけが営業品目として謳えるものです)が体の表面だけなのに対し、サンタマリアノヴェッラのリキュールは、体の中心から体全体に浸透するような感じだ。しかも瞬間的に、なおかつ音もなく。そして静かに、柔らかく、儚く消え去る。その余韻の素晴らしさといったら、余韻にこそ美しさが秘められているかのようだ。

ハーブの酒は、苦味があるか、ハーブでないか、どちらかであることが多い。サンタマリアノヴェッラのリキュールは、極めて稀な、100パーセント天然のハーブでありながら、苦味のない酒へと仕上がっている。当然のごとく、人工的なものが放つ不快さもない。アルコールが尖っていてきついなんてことも皆無。うまく喩えられないが、ハーブ園に蜂蜜をかけたらこんな風になるのではないだろうかとも思うし、でもそれだと土臭さやむせ返る青臭さが強いだろうし、出来の悪いコーディアルにもありそうだから、やっぱり違う。いまの喩え、なし。

リキュール嫌いの方でも常温のストレートで美味しく飲めるが、冷やしたりロックにすると、さらに飲みやすくなる。濃密さはなくなるが。また、炭酸水で割ったりすれば、最高のドリンクとなる。いずれの飲み方でも手近なハーブなどを添えれば、さらに雰囲気が上がること間違いなし。ボタニカルブームの昨今ではありますが、これよりもボタニカルなドリンクもなかなかないのではないでしょうか。

サンタマリアノヴェッラのリキュールは、100ミリリットルと300ミリリットルの2サイズある。ミリリットル単価は大きなほうが安くなるし、たまにしか購入しないのだから300ミリリットルにすればいいのだけれど、私の財政事情がそれを阻む。100ミリリットルで6000円なのだ。たまに「まれによくある」状態になる程度が、私には合っている。アル中でもないし、常備薬がないといけない持病もちでもないのだから。




補足;ショップへ行くことが困難な方は「最寄りの」サンタマリアノヴェッラへ電話で問い合わせて相談すると、最寄りの店へ品を回してくれる場合があります。場合によっては配送も。あくまでも、超絶的なイレギュラーな我が儘を言っているわけなので、可能かどうかを尋ねる雰囲気で問い合わせるのが良いと思います。客だから、買うと言っているのだから、という態度は、サンタマリアノヴェッラに限らず、あらゆる店で敬遠されます。

以上是六千二百二十八文字也。

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