ロラン・バルト『記号学への夢』

kigougakuhenoyume

著作集第四巻
目次。

1958
ブレヒトとわれわれの時代──教育機関誌のためのブレヒト紹介
取り憑かれた俳優という神話──役柄との距離
ロジェ・ブランションの立場──ヴィルールヴァンヌ市立大劇場への引越し
『ユビュ王』──ヴィラール演出によるアルフレッド・ジャリの戯曲
反ユダヤ主義は右か、それとも左か──アンケートへの回答

1959
ニューヨーク、ビュッフェ、高さ──アメリカ帰りのバルトのビュッフェ観
スキャンダルとは何か?──ラカーズ事件をめぐって
映画 右と左──クロード・シャブロルの映画『美しきセルジュ』
食堂車──タック社の車両で食事を
言葉と衣服──モードに関する基本文献の紹介
シンポジウム──ヌーヴォー・ロマンの栄光と衰退
自宅で編み物──アルジェリア戦争、銃後の守り
職業の選択──女性にとっての仕事
「ある」という動詞の使用法について──アルジェリアをめぐる言葉の戦い
悲劇と高尚さ──アンドレ・マルローによる国立劇場の改革
フランスにおける文学批評の新たな道──歴史批評と心理批評を考える
『繻子の靴』──クローデル劇の上演におけるパラドックス
ド・ゴール将軍の体制について──第五共和制と知識人の立場
『靴屋の祭日』──古典劇を再演する意義とは
二つの見本市──自動車と事務機器
ド・ゴール、フランス人、文学──ド・ゴール『回想録』を読む
『肝っ玉おっ母』の七枚のスティール写真──ロジェ・ピックの写真からブレヒト劇を見る
『三銃士』──<形式>の責任をめぐって

1960
衣服の社会学のために──キーナー『衣服、モード、人間』の書評
「今年は青が流行です」──モード服における記号作用単位の研究ノート
『バルコン』──ピーター・ブルック演出によるジュネ作品について
『フランス文明史』──ある歴史的心性
解説──ブレヒト『肝っ玉おっ母とその子供たち』への序文(ピック撮影の写真入り)
左翼批評について──雑誌アンケートへの回答

1961
宝飾品からアクセサリーへ──装飾品をめぐる神話
フランスのアヴァンギャルド演劇──前衛とは何だったのか
マス・コミュニケーション研究センター(CECMAS)──その設立をめぐって
ロブ=グリエについての証言──この作家の功罪
巻頭言──『コミュニカシオン』誌の創刊に際して
『動機調査』──マルキュス=ステラの本の書評
『イメージの文明』──カトリックセンターによる論文集についての批評
ビジュアルな情報──第一回「視覚情報国際会議」の報告

1962
<古代演劇グループ>についての手紙──ソルボンヌの先輩から後輩へ
ダンディズムとモード──何がダンディズムを殺すのか?

1963
大衆娯楽作品とテクスト解釈──「教育と大衆文化」をめぐって
スターの人気調査は?──『コミュニカシオン』誌に寄せた報告
自動車の神話──インタビューにもとづくフランス人の意識調査
小説をめぐる二つの社会学──リュシアン・ゴッドマンの方法を考える
現代の意味作用体系の総覧:事物の体系(衣服、食物、住居)──高等研究院における講義の報告

1964
ジャンソン──画家マルクス・ジャンソン作品展に寄せて
断章三編──精神分析、対話のユートピア、社会主義と抽象絵画
小説なき社会?──ブランショ編集の雑誌に掲載されなかった未発表原稿
『イメージの文明』──ボンピアーニ年鑑の書評
巻頭言──『コミュニカシオン』誌「記号学研究」特集号
人文諸科学とレヴィ=ストロースの著作──『野生の思考』の衝撃
現代の意味作用体系の総覧──講義の報告
『批評をめぐる試み』を語る──インタビュー



5年分の原稿が収録されている。ヌーヴォー・ロマンに目くばせしながらも、バルトは相変わらずブレヒトを中心とした演劇に興味が向いている。そして『コミュニカシオン』誌に関わり、政治に対しても立場を(バルトらしいやり口で)表明している。現代社会のさまざまな事象を神話化する手腕はさらに冴え、クルマや装飾品/アクセサリーをはじめ、衣食住という人間の生活に不可欠な(ものだと思われている)三つについても思考をした。そして、ソシュールで記号学を知ったバルトにとって、重要な出会い、レヴィ=ストロース。この章を読んだとき、心の底から感動した。哲学書(とそれに近い読み物)で、こんなかたちで感動するなんてめったにない。もともとサルトルとは考え方の異なったバルトにとってレヴィ=ストロースの登場はまさに衝撃だっただろう。『野生の思考』は、構造主義の源のひとつで、偽善者サルトルの実存主義を徹底的に批判したものだ。ここでバルトは、記号学と構造主義という中期バルトにとっての二本柱を得る。その成果は、1965年から1966年にかけて続けざまに発表された『記号学の原理』『旧修辞学』『物語の構造分析』そして『テクストの快楽』に結実する。バルトが「哲学者」として最ものっていた時期だ。その萌芽が、この巻にはさまざまなかたちで見えかくれしている。いきなり論客となったバルトが、神話に挟まったこの期間、どのようなものに興味を示し、どのようなまなざしで見ていたのか、それを知ることは、とてもうれしい。
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