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アンナ・カヴァン「氷」



幻想文学とSFを兼ね備えた小説は好物(でもファンタジーの要素まで入っていると途端に苦手となる)。たとえば、アーサー・マッケンやJ.G.バラード。アンナ・カヴァン「氷」は、そういったものが好みの人にとっては極上の一冊。サンリオSF文庫の復刊(の文庫化)。

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ホセ・ドノソ「別荘」



混沌としたビジョン。

ラテンアメリカ文学といえば、マジックリアリズム。漆器における輪島塗の如く最も一般的に知られているのは、ガルシア=マルケス「百年の孤独」だ。マジックリアリズムは、とても濃密。すごく濃いリキュールで酩酊するかのような、熱を出したときに見る夢のような、そんな読書。いまいち日本では知られていないのだけれど、ドノソの小説も、濃密。代表作のひとつとされる「別荘」の日本語訳が、ようやく出た。2014年の小説で一番と言い切ってしまいます。

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テリー・イーグルトン「文学とは何か」



文学ということばがあまり好きではない私は文芸ということばを用いている。それは音楽や美術と同じもので、学問領域だとは思っていないから。という私ひとりの信条などは置いといて、一般的に小説や詩や戯曲は文学と呼ばれている。「文学」には、他の文章にはない何かがあるからこそ文学にカテゴライズされる。新聞や雑誌の記事、ブログやSNSの書き込み、メール、そういった普段接する文章と小説とでは、何が違うのか。そもそも文学とは何か。という謎を解き明かしたのが、この20世紀を代表する名著。こういうのは分厚い専門書ばかりだ。しかしこれは1983年刊行と比較的新しいのだけれど、岩波文庫に収録された。日本語訳の単行本が岩波書店から出ていたのだから文庫化されるなら岩波文庫しかありえないのだけれど、最近の岩波文庫は大江健三郎など「岩波現代文庫」のほうがふさわしいのではという気がしないでもないラインナップとなっている。左翼、それも自称「インテリ左翼」の代表格である岩波なので、反日左翼の大江を優遇するのは当然といえば当然だが、それにしてもおかしな流れだ。でも、そんなおかしな流れがあってこそ、1983年刊行の本書も文庫化されたのかもしれないので、こういう普遍的なものだけありがたく享受すればいい。

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